屋上農園までは
いつもの電車に乗って行くことにした


サランちゃんは電車に乗るのが初めてのようで
改札を通るのにもワクワクしているようだった

土曜日の朝の電車は
通勤時と違って空いていたので
並んで座席に座ることができた

途中で
ドアの付近にお年寄りが立っていることに気がついて、声を掛けて席を譲った

すると
サランちゃんが僕に向かって

「次は私の番ね」

と小声で囁いた

次に見かけたら、自分が代わるってことだろう

もう!可愛いったら!



ビルのエレベーターを屋上まで上がって外に出たら
すでに人が集まっていた

課長も主任も、営業1課のウニョク主任の顔も見えた


「チャンミン!」

ドンヘ主任が僕を見つけて駆け寄って来た

「可愛い子が一緒じゃないか
なんてお名前なのかな?」

しゃがんで話しかける

「サラン」

ちゃんとお返事ができた

「偉いね、いくつ?」

「4歳」

ドンヘ主任は人懐っこい顔で話すから
サランちゃんも恥ずかしがらずに答えられるようだ

「知り合いの娘さんを、ウチでお預かりしてて
それで今日、連れて来ちゃいました」

簡単に説明したら

「シム、よくやった」

課長が嬉しそうにそう言うと
サランちゃんに自己紹介した

「おじさんはね、このお兄さんと一緒に働いている人なんだ
サランちゃんとも仲良くしたいけど、良いかな?」

「うん
ママがね、頭が痛くてボーインに行ったの
だから、サランはお留守番してるの」

ボーインって、病院のことだよね


「そうなんだ
今日はおじさん達とお芋掘りをしようね」

課長はサランちゃんの頭を撫でながら、優しく誘ってくれた


「みなさ〜ん!
始めますよ〜!」

ウニョク主任の呼びかけで
みんなで畑に入った


ウニョク主任にも、サランちゃんを紹介した

「僕は、ウニョクって言います
よろしくね、サランちゃん」

「あのね、
ママがね、頭が痛くてボーインに行ったの
だからサランはお兄ちゃんのおウチで留守番してるの」

と、また繰り返した

サランちゃんが健気で
抱きしめてあげたい衝動に駆られた

ウニョク主任が頭を撫でて

「偉いなぁ
今日はたくさん採ってくれよ」と言った


サランちゃんは
おじさん達の中でも
笑顔で、楽しそうに土を掘っていた

みんながサランちゃんを囲んで
優しく教えてくれたり
芋が採れたら大袈裟に褒めてくれる

サランちゃんは夢中になっているようだ


そろそろお腹が減って来たと思った頃

ドンヘ主任とウニョク主任で
海苔巻きやおにぎりやサンドイッチ、唐揚げなど
美味そうなものをたくさん買って来てくれた

まるで遠足に来たみたいに
みんなで車座になっていただいた

お腹がいっぱいになると

サランちゃんは眠そうに目を擦っている

保育園なら、お昼寝の時間なのかも

僕の膝の上に、サランちゃんの頭を置くように誘導して
膝枕をしてあげたら、小さな寝息を立て始めた


チョン課長は、上着を脱いで
サランちゃんにそっと掛けてくれた

しばらくしても、起きそうにないので
僕はお先に失礼することにした


続きます


読んでいただきましてありがとうございました😊