『弱いつながり 検索ワードを探す旅』
東 浩紀
言葉は発したと同時に嘘になる。
本当の気持ちを言ったとしても、
現実に見た出来事を話したとしても、
誰かに聞いた話を一字一句正しく伝えたとしても、真実から遠ざかる。
そんなことを思っていたとき、この本に出会った。
言葉に真実性をもたせようとすると、争いが起こる。
言った、言ってない、の話になり、どちらの言い分が正しいのかわからなくなる。
言葉には少し嘘が混じっている。
でもその嘘はわざと入れたわけでもない嘘もある。
人からよく思われたいから、少し表現を変えて言葉にしたり、親や教師から怒られたくないから反省しているように見せかける言葉を使ったり、傷ついた友人を慰めるために優しい嘘をついたり、この世の中は嘘であふれている。
ネットの検索であっても、テレビであっても、本や音楽も、自分の欲しい情報を手に入れようとしているにすぎない。
言葉は情報とも置き換えられる。
どんな情報も正しいとは限らない。
どんな情報にも少し嘘が混じっている。
だから「弱いつながり」というのはしっくりきた。
「弱いつながり」は、言葉より感覚に近い気がした。
〜いまのあなたを深めていくには、強い絆が必要です。
けれどもそれだけでは、あなたは環境に取り込まれてしまいます。
(省略)
弱い絆はノイズに満ちたものです。そのノイズこそがチャンスなのだというのがグラノヴェターの教えです。〜
〜強い絆は計画性の世界です。だから計算高い、慎重なひとは、強い絆をどんどん強めることを望みます。
(省略)
他方で弱い絆は偶然性の世界です。人生は偶然でできています。それを象徴するのが子どもです。〜
強い絆と弱い絆を行き来して、嘘の世界を楽しみたいものです。