『父のボール』 角田光代
家族ってなんだ
親ってなんだ
家族だからこそ、なかなか人には話せない、そんな主人公の心の動きを、なんともいえない気持ちで読み進めた。
人間って、結構、残酷なもの。
その残酷さを、ポツポツと語る角田節で、
ゆっくりと主人公の心に入っていく。
人間の残酷さもオブラートに包むわけではないのに、その残酷さに共感してしまう角田さんの世界に引き込まれました。
角田さんのこんな考え方が好き。
あとがきより
あ、迷ったかも、と思うとき、いったん立ち止まって正しい道を考える人と、とりあえずそのまま歩きながら考える人とがいると思うが、私は完全な後者で、迷ったかもと思えば書き、ここはどこだと不安になれば書き、もうだめだと絶望すれば書いた。どこへもいけないし何も解決されないと思っていた。〜
読み手としてだけ小説と関わってきたときは、一編の小説というものはそれで簡潔していて、なおかつ不変なのだと思っていた。〜二十歳の自分が私のすべてではないように、一編の小説はそれだけでは完結していない。そしてやはり人と同じように、小説も年をとったり、すがたかたちを変えていく。