昨日映画「あんのこと」を観て、その内容に何とも言えない衝撃を受けて

その夜、悪夢にうなされました(苦笑)

私、そんなに引きずってるんだ・・・と自分でも驚いた。

 

人生還暦を過ぎて、それなりにしんどいこと、辛いこと、悲しいことを色々経験してきたから

出来ればこれからは楽しいことだけを追求したい、と思ってる私なので

観る映画もそういうタイプに絞りたいのが本音。

だから

稲垣吾郎さんが出演していなければ、絶対に自ら足を運ぶ作品ではなかったと思う「あんのこと」

でも、今の日本が抱える様々な問題は決して他人事ではないし

あなたのすぐ傍にも「あん」はいるのだと突き付けられた気がしたから・・・

現実を見つめる、考える機会を与えてくれる作品を観ることも大事なんだな、と今は思っています。

 

ここからは映画を観た私的感想。

ネタバレ含みますので、知りたくない方はスルー推奨

とにかく、最初から最後まで杏が可哀想過ぎて胸が痛かった。

これでもか、というぐらい杏に降りかかる苦難。

助けようとした人はいたけれど、本当の意味で彼女を助けられた人は1人もいなかったから、あんな結末になってしまったのかと思うと本当にやるせない。辛い。

 

家庭内暴力、薬物、売春、ネグレクト・・・と酷いことばかりの描写。

何度も目をそむけたくなった。

人の尊厳をこれほど損なう作品、私はあまり観たことない。

それでも必死で生きようとする杏の前に立ちはだかった「新型コロナ」

人は喉元過ぎれば熱さ忘れるものなので、当時のあの異様な状況も忘れかけていたけれど

杏が人生を再生しようとしている真っ最中に、人との関わりも、職も、失ってしまった残酷な現実・・・なすすべもないコロナにどれほど絶望したことだろう。

きっと日本全国、そういう人は沢山いたんだと思う。

 

わかりやすくダメだったのはもちろん杏の母親で。

最低最悪な毒親には違いないけれど、大きな意味で捉えたら、彼女もまた誰からも救われない人生を生きてきた結果、ああなってしまったのだと思う時怒りを通り越して哀れさが募る。

本当に負の連鎖というか、悪しき環境の循環には言葉を失う。

まったくタイプもテーマも違うけど「燕は戻ってこない」で描かれている女性の貧困や無知無教養がここでも大きな原因になっているのかな。

そして結局

この国の福祉制度って本当に困っている人を拾い上げることが出来ない面があるんだよなぁ・・・と痛感。

杏が多々羅に連れられて生活保護を受けられないか役所に相談に行く場面があったけど、けんもほろろに扱われる姿を見てため息が出た。

自分では助けてと声を上げる術も知らず、いざ上げたところでふるいにかけられて公的には救済されない。

小学校すら途中で行かなくなった杏のことを、どうして学校の先生や児童相談所は放っておいたのか。

誰一人、彼女のことを真剣に心配した人はいなかったのか、と思うと暗たんたる気持ちになる。

けれど、いざ自分の隣に「杏」のような子が住んでいたら、私はその子に何かしてあげることが出来るのか?

と、問われたら答えに迷ってしまう自分がいます。

 

本当に、色んなことを考えてしまう映画でした。

 

私がこの作品を観て一番最初に出た言葉が「重い・・・」だったんだけど

河合優実さんにそれを見透かされているような、インタビュー記事↓

 

 

「重いという言葉で片付けたくない」映画。

確かにそうですね。

 

優実さんがインタビューで語ってるけど共演の佐藤二朗さん、吾郎ちゃんも本当によかった。

この2人でなければ、作品の色合いはまた違ったものになったと思います。

何に出ても、主演じゃなくても、ピタッと作品にハマる吾郎ちゃんって本当に凄い。

 

そして河合優実さん。

ドラマ「不適切にもほどがある」とはまったく違う、こんな壮絶な役を演じきったのは本当に素晴らしい。

来年の映画賞の主演女優賞、総なめにするんじゃないの?と思うほど圧巻の演技でした。

 

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2020年、この日本で起きていた、本当のこと。

彼女(あん)は、きっと、あなたのそばにいた。

 

このキャッチコピーが深く胸に突き刺さる映画でした。