作詞家小倉めぐみさんを偲んで。
つづきです。
その1ではSMAPのアルバム「004」まで 小倉さんが手掛けた作品を紹介しました。
デビュー当初はそれまでのアイドルのセオリーを踏襲するような曲が多かったSMAPが
段々「アイドル=王子様」というよりも「等身大」の身近な男の子、という路線にシフトチェンジしていったのがデビューから2年が経った頃だったでしょうか。
当時彼らの音楽プロデューサーだった野澤孝智さんという方が2017年にラジオで語ったエピソードからもそのことが伺えます *参照↓
↑の記事の中でも書いていますがSMAPのことを
>この子たちジャニーズ事務所っぽくない。その辺の街ですれ違うような男の子たちって感じ
>この子たちを王子様にするのは無理かもしれない
>『地下鉄でぶつかった女の子と恋に落ちる』みたいな道端に落ちているようなことをテーマにしてこの子達の音楽を作ってみよう
と思ったそうで。
そういうコンセプトに、小倉めぐみさんの書く詞、言葉はとてもマッチしていたんじゃないかと思います。
「004」の【かなしいほど青い空】も、失恋した男の子の心情をリアルに歌った作品だったし。
「等身大」がこの頃のSMAPの戦略キーワードだとしたら、小倉さんがこの時期に立て続けにSMAPのシングル絡みの作品に関わっていることも納得です。
【君は君だよ】 (9枚目シングル。1993年9月9日リリース)
【どうしても君がいい】 (シングル「君は君だよ」カップリング)
なんと。シングルのA面B面(死語)の両方を作ってるって、凄くない?
【君は君だよ】は、私的には早すぎた名曲だと思っているのですが
>君は君だよ だから誰かの
のぞむように 生きなくていいよ
という「あなたはそのままでいいんだ」という歌詞は
後の【世界に一つだけの花】の「人は皆オンリーワンの存在」だというメッセージと共通していると思います。
確か小泉純一郎元総理がスマスマのビストロに来店した時、「僕は『世界に一つだけの花』より『君は君だよ』の方が好き」と発言されたと記憶していますが、元総理もこの2曲に同じ意味を感じていらしたのかな。
同じメッセージでも「世界」の方は大局的で(だから多くの人の心を感動させてミリオンセラーになったわけで)
こちらの「君は君だよ」は、もっと身近な友達に話しかけるような世界観ですよね。
青春の悩み(進路、恋愛、人間関係等々)を抱える友をそっと励まし見守るような、友情を感じさせる詞。
いい曲なんだけどね。
発表された当時の彼らの衣装がキラキラ王子様風で・・・ これね↓
いや、これはこれでビジュアルとしては超イケてるけど(個人的には大好きですが)
この衣装で、踊りながら歌う・・・ような曲か?これ。
と、かなりミスマッチを感じていた私です(苦笑)
だから、この曲の本当の良さはワインのように?何年も寝かせた後でじわじわと発酵しているように思います。
森くんがSMAPを去った後すぐのコンサートツアー(96年超無限大翔)の終盤でこの曲が歌われる時
メンバーは皆森くんのことを思い出し、そして詞の内容があまりにも森くんが去っていく時とリンクしていたので、思わず涙ぐみながら歌った・・・とつよぽんが自身のエッセイで書いたこともありました。
今だって、私はしょっちゅう森くんに向けてこの曲の歌詞を引用して語りかけています。
>君は君だよ いつも自分が
やりたいこと まっすぐ見つめてなよ
ってね・・・
作られた時はまさか、こんな未来が6人に訪れるとは誰も予想もしてなかっただろうけど
年月を経て、特別な意味を持つ曲になったのかなぁと思うととても感慨深いです。
そしてこの曲は、彼らに限らず人生を一生懸命生きる1人1人に寄り添った曲、支えとなる曲ではないかなと思っています。
小倉さん、ホント天才です。
そしてそのB面←カップリングと言いなさい(苦笑)
これもまた名曲!
【どうしても君がいい】
詞の内容はやっぱり等身大の若者の恋愛モノで、お互いに傷つけ合いながらも離れられない刹那的な恋人たちの様子を歌っているんだと解釈してますが・・・
何て言うんだろ。
すごいドラマチックな曲。 歌詞はこちら→ どうしても君がいい Uta-Net
ワンフレーズごとに、その場面がはっきり想像できるっていうか・・・メンバーがこの曲の主役としてドラマを演じてる映像が簡単に想像できるような・・・そんなイマジネーションをかき立てられる、ファンにとっては堪らない妄想曲じゃないかな~と、年食ったおばちゃんでも思う(爆)
だって、冒頭から凄いよ。
>かわいくない唇 憎まれ口ばかりさ
目の前に立ってたら すぐにふさぐのに
って、タクヤにそんなこと言われたら!キャー!! って思うじゃないですか(なぜか木村君を妄想相手に選ぶ私←森くんじゃないのかwww)
きっと鼻っ柱の強い彼女なんだろうな・・・
でもそういう子ほど、手応えがあって惹かれるんだろうな・・・若者は。
(「いやいや、振り回されるだけだから、あかんで。やめとき」と説教したくなるのは、私が中高年だから・爆)
>カードがもう 無くなるから
とにかく ここで待ってる
思いきり 電話を切った
ここも、イイ・・
何なの、この強引さ。若さって素晴らしい。
こんな風に真っすぐに気持ちをぶつけられたら、そりゃー女子は堪りませんー!←興奮
ところで、私は昭和のニンゲンなので「カード」の意味はわかりますが
お若いファンの方々はこの「カード」って何のことかわかってんのかな?といらぬ心配までしてしまう(爆)
昔むかし、まだ携帯電話なんぞなかった頃、人々は公衆電話から「テレフォンカード」という物を使って電話をかけてたんじゃよ(日本昔ばなし風)
今コンビニで使うクオカードみたいなもんじゃな。
500円とか千円とか上限が決まっていて、長電話するとそれがどんどん減っていって「ああ~切れる~!」って焦ったもんじゃよ。
だから「話の続きは、ここに来いよ!待ってるから!」って言って乱暴に電話を切る中居君(を妄想・・・←なぜ森くんじゃないwww)
ドキドキしますね!この展開!
>愛しあって 信じあって 抱きしめあって眠って
単純であたたかい 恋ならよかった
って、口では言ってますがー
いやいや、そうじゃないからよけい燃えるってもんよねー
と、勝手にこっちでうなずいてる(爆)
恋って、好きっていう感情って理屈じゃないよね。
ただシンプルに好きだから。
どうしても、何があっても、君がいいんだ!という感情は誰にも止められるものじゃない。
>どうしても君がいい 痛みばかりが増えても
>どうしても君がいい 誰の顔も浮かばない
若くて青い時代に、誰もが通る感情・・・
がむしゃらで一途な、熱。衝動。
それをこんなにドラマチックに表現出来る詞って、凄いです。
SMAPのカップリング曲は名曲揃いだけど、この曲も本当にそう。
でも
いい曲ではありますがまさかこの曲が、2016年のSMAP解散直前にファン投票で選ばれたベストアルバム50曲の中の7位に食い込む健闘を見せたことは意外でした(笑)
「どうしても君がいい」というタイトル。
痛みが増えても、他の誰よりも、君がいい!どうしても!!
という内容は、もはや恋愛うんぬんを飛び越えて解散するSMAPに対するファンの悲痛な叫びとして、響きました・・・
詞を書いた小倉さんも、発表当時にはこういう形でこの曲が再びファンの支持を集めるとは想像していなかったんじゃないでしょうか。
そう思うと、SMAPの楽曲って、ホントに色んな意味で歴史ありですよね。
この曲の後も、小倉さんの作品は次々とシングル曲のカップリングになります。
【話をしていたくて】 (シングル「$10」カップリング)
【忘れないでよ】 (シングル「君色思い」カップリング)
これらの2曲は若者の夏のひとときに絡んだ恋愛ソングとでもいいましょうか。
>砂浜で花火の準備
とか
>秒読みで夏が翳っていく
なんていう
若い時しか体験できない夏の思い出とそのきらめき、ときめきを綴った詞が瑞々しくて、これもまた当時の年齢のメンバーが歌うからこそリアルに響いた曲だったんだろうなぁと思います。
ただ、おばちゃん(私)にはとっくに過ぎ去った時代の話だったので(苦笑)
あるよねーそういうこと。
若いって素敵ね。
ぐらいにしか思えなくて、小倉さん、すいません
昔からここでもよく書いていますが
私はSMAPが音楽の面でそれまでのアイドルとは違う領域に足を踏み入れた、と思ったのはシングル「$10」が発売された時で・・・
それをきっかけに彼らはどんどんドライブがかかる、というか一気にギアを上げたというか
アイドルの域に収まらない音楽を作り始めたように感じていました。
つまりそれは、私が一番SMAPにハマっていた頃の音楽なわけで。
次回はそのことを書きます。
つづく