正直に言えば、放送前は不安だった。
「戦は嫌でございます」という現代風の価値観の押し付けはないか?
秀吉をただの正義の味方として描くのではないか?
しかし、第1回を観終えた今、その不安は「ワクワク」へと完全に塗り替えられた。
近年のがっかり感を吹き飛ばす、最高の滑り出し。私が何に震えたのか、その理由を書き留めておきたい。
1. 「身近な人を腹いっぱい食わせたい」壮大さのない秀吉像
今回、一番ドキドキしたのは藤吉郎のキャラクターだ。
彼は平気で嘘をつく。
けれど、その「偉くなってやりたいこと」が、世界をどうこうという壮大な話ではなく、「身近なものを幸せにしたい」という極めて泥臭い、出自の低さを感じさせるものだった。
この「身の丈に合った欲望」が、彼という人間を猛烈にリアルに見せている。
特に気になるのは、姉妹との関係だ。
厳しい姉(とも)への仕打ちは、この時「猿」と罵倒されたことへの恨みも入るのか。
一方で、妹・あさひは現時点で兄に悪い感情を見せていない。
「秀吉はあさひを道具として使った酷い兄」という描き方になるのかと思っていたが、もしかしたら違うのかもしれない。
「腹いっぱい食わせたい」という兄なりの愛情ゆえの悲劇なのだろうか。
世界を救いたい、戦のない世を作りたい……そんな大きな願いではない、「目の前の家族を幸せにしたい」という切実な願いが、この先にどんな悲劇を呼ぶのかと思うと、今から胸がざわつく。
2. 本音と嘘の境界線
劇中で描かれた秀吉の言葉を振り返ると、彼の中にある「本物」と「嘘」が鮮やかに描き分けられていた。
- 【本物だと感じたシーン】
- 厠に潜んでいる時の「みんなを幸せにしたい」という呟き。
- 寧々を美人だと手放しに褒めるシーン。
- 小一郎に「兄者が恐い」と言われた時の表情。
- 【嘘(処世術)だと感じたシーン】
- 家族に対しての大口。
- 信長に不満を問われた際の、あの「手の動き」。
「生存戦略としての嘘」を使い分ける姿に、ただの明るい農民ではない底知れなさを感じてゾクッとした。
最後のあの表情は、もしかしたら藤吉郎自身も気づいていなかったのかもしれない。
自分の価値観が、家族の価値観と決定的にズレ始めていることに。
でもきっともう、藤吉郎は戻れないのだ。
3. 小一郎が感じた「恐怖」の正体は、視聴者の視点
物語の軸となる「豊臣兄弟」の関係性も、いい意味で予想を裏切ってくれた。
てっきり「仲良し兄弟の二人三脚」で行くのかと思いきや、小一郎は藤吉郎に「恐怖」を抱き始める。
もともとは仲の良かった二人だが、藤吉郎の出奔により、小一郎は憤りを覚えるようになっていた。
しかし、いざ再会した藤吉郎の「本音の見えない不気味さ」や、目的のために平気で自分を偽る姿を一番近くで見てしまったことで、愛憎を超えた「恐怖」の感情が生まれている。
そんな小一郎の視点があるからこそ、この物語には一本筋の通った緊張感が生まれているのだと感じた。
これから1年、楽しみが止まらない
オリジナルキャラの直ちゃんや、個性豊かな姉妹たち。
第1回にして伏線がいたるところに散りばめられている気配がした。
この兄弟が、ここからどう史実を辿り、あの「天下」という渦に飲み込まれていくのか。
毎週日曜日が待ち遠しくてたまらない1年になりそうだ。
あと森可成様が出てきてくれたのが嬉しかったです。
ワンチャン森家全員来るのでは……