最終回 後編 ~時よ止まれ、君よ通り過ぎるな~ | The Stone Age プチロングラン公演記念                  森達行の『The Stone Age 今昔物語』

最終回 後編 ~時よ止まれ、君よ通り過ぎるな~

さて、この文章を読んでいる大半の方は、

今回の舞台をごらんになったと思う。

A・B・Cのパターンがありました。

複数回見られた皆様、どのパターンが好きですか?

それぞれに味があり、私には甲乙を付けれませんでした。

今回の舞台も、役者の皆さん達は本当に個性があって

(と言うよりも、まともなキャラが一人もいなかった)素晴らしかった。
今ごちゃごちゃ書くと、観て頂いたお客さんの興を損なうので、

ここでは割愛させていただく。


しかし一つ言える事がある。

坂本顕・・・やはり彼は笑いの悪魔である。

Aパターンを観た方は、その異様さに圧倒されたことだろう。

しかも舞台上では、お客を笑わすよりも、

主役の緒方晋を笑わすことに精力を注ぎまくっていた。

それをもって、お客さんを笑わそうとするのだから、悪魔どころか魔神である。

さらに坂本顕のこと。今回の舞台は4次元という魔法の世界。

そんな知らない世界に憧れてたツトムは、

不思議な模様の書かれた2本の柱を交互に

999回タッチすることで魔法の世界に行き、

ラストでは、同じく2本の柱を様々な思いを抱えて999回タッチし、

前の世界に帰る。


坂本顕が出てくるのは、このツトムが帰るラストの直前。

本番前に彼はこう言った。

「出番が終わって引っ込む時に、あの2本の柱の間を、

 デンしてデンして去って行ったろうか?」

マジですかい!それはあかんやろ?されど彼は本当にやりかねないのだ。

ここでブッチャケ本音を言うと・・・見たかった。

その時には緒方晋の頭の中は真っ白になり、

演出の鮒田さんは手で顔を覆って天を仰いだだろう。

そして役者の控え室では、声に出せない歓声と爆笑が巻き起こったに違いない。

その時お客さまは、どう思うだろうか?

観たい!と思ったあなた!立派な坂本予備軍です。


そう言えば打ち上げの席で、鮒田さんが面白いこと言ってくれた。

緒方晋に大入り袋を渡す時の口上で

「久々に主役を演じました!緒方晋!!」
実はこの数回、彼は主役じゃなかったらしい。

それをあたかも主役のごとく演じきった緒方晋。

流石は“自称”看板俳優なり!


最後に、観劇の料金について述べたい。

舞台の2,000円といえば、映画館の入場料より高いのだ。

例えば「スターウォーズ・エピソード3」を

缶コーヒー付で見てもおつりが来る、かなりの金額だ。


しかしThe Stone Ageの舞台は、

その料金を払っても、充分楽しめておつりが来る。
関西に劇団は沢山あるが、

この料金でこれだけ面白い舞台をしてくれる劇団は他に少ないと思う。
この劇団は小劇場を一度も観た事の無い方にも胸を張ってお勧めできる、

数少ない劇団の一つだ。


まだまだ書きたい事はあるが、取り敢えずはこの辺りで筆をおきたいと思う。

これまで数週間に渡り、長々と文章を綴らせていただいたが、

こりずに読んでくださった皆様、ありがとうごさいます。

しかし何度も言うけど、この劇団は面白い。

だからこれから先も、今までと変わらず、

そしてこれ以上に面白い舞台を魅せていただきたい。


作・演出の鮒田さん曰く

「お客さんが観てくれるから、俺たちはこうして舞台が作れるんです」

そんな舞台作りのためなら、

わたしはスタッフとして尽力を惜しまない。本当にそう思う。

                                 

おわり