幼いR・マクドウォールが父を呼ぶ、冒頭の爽やかなヨーデルのような掛け声が耳について離れない。J・フォードの美しい人間讃歌である。19世紀のウェールズの炭鉱町。ヒューはモーガン家の末っ子で、家の男達はみな炭鉱で働く。学校ではいじめられっ子でも、皆の励ましで悪童に立ち向かい認められる芯のしっかりした少年だ。石炭産業は不況で、賃金カットに抵抗し、組合結成の動きが高まり、長兄イヴォーを始め、一家の若者たちはその先鋒に立つが、父(D・クリスプ)はこれに反対。息子たちは家を出、姉のアンハード(M・オハラ)とヒューだけが残される。新任の牧師グリフィド(W・ピジョン)と姉は秘かに魅かれあっているが、禁欲的な彼を前に、姉は不本意な結婚を承諾、南米へ渡る。川に落ちた母を助けて凍傷になったヒューを親身に励まして以来、グリフィドとは固い絆で結ばれ、彼の奨めでヒューは文学の世界に目覚める。が、長兄が事故死し、ヒューは止むなく学校を中途で辞め、兄に代わって働く。姉が実家に戻った時、グリフィドとの心ない噂が立つが、牧師は卑俗な村人の心を責め、教会を去っていく。ちょうどその日、落盤で父までが犠牲になるのだった……。不幸なことばかりの少年時代だが、成長した彼にはあくまでその月日は麗しく尊いもの--と語るフォード節に泣かされること必定の名作。オスカーには、作品、監督、美術、撮影(A・ミラー)、助演(クリスプ)、装置の6部門で輝いた。当初は西ウェールズでのオールロケが予定されていたが、大戦勃発のため、サン・フェルナンド・ヴァレーに広大なオープン・セットが建てられた。
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旧東ドイツで反体制派への監視を大規模に行っていた秘密警察“シュタージ”。本作はこのシュタージ側の人間を主人公に、統一後も旧東ドイツ市民の心に深く影を落とす“監視国家”の実態を明らかにするとともに、芸術家の監視を命じられた主人公が図らずも監視対象の考え方や生き方に影響を受け、新たな人生に目覚めてしまう姿を静謐なタッチでリアルに描き出す感動のヒューマン・ドラマ。主演は自身も監視された過去を持つ東ドイツ出身のウルリッヒ・ミューエ。監督はこれが長編第1作目となる弱冠33歳の新鋭フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。
1984年、壁崩壊前の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓う真面目で優秀な男。ある日彼は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界にヴィースラーは知らず知らずのうちに共鳴していくのだった。そして、ドライマンがピアノで弾いた“善き人のためのソナタ”という曲を耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられてしまうのだったが…。
大力自慢の大道芸人ザンパノが、白痴の女ジェルソミーナを奴隷として買った。男の粗暴な振る舞いにも逆らわず、彼女は一緒に旅回りを続ける。やがて、彼女を捨てたザンパノは、ある町で彼女の口ずさんでいた歌を耳にする……。野卑な男が、僅かに残っていた人間性を蘇らせるまでを描いたフェリーニの名作。
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