特別養護老人ホーム | 守田比呂也の見たり聞いたり、話したり

特別養護老人ホーム

宇津井健さんの訃報はショックだった。

近頃、ご縁のあった人々が毎年、幾人か亡くなっていく。そしてその殆どが年下の人なので、生死の無常は十分心得ているつもりだったのに・・・。


宇津井さんとは文字通りの一期一会で、テレビ・ドラマでご一緒になり、近郊のお寺でのロケに参加した憶えがある。報道によれば、毎日腹筋運動150回という宇津井さんは典型的な健康オタクだったそうである。亡くなる一年前から肺気腫を患っておられたとのこと。どんな病気か知らないが、よほど恐ろしい病なのか?

合掌


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肺といえば今年の正月、松も取れないうちに救急搬送で入院した時の診断が肺炎であった。搬送されるまでのいきさつはよくわからない。どの時点かで気を失っていたらしい。治療はひたすら点滴だった。脱水症状もあったらしい。


1月末に退院したものの、2月の半ばにまた肺炎、今度は誤嚥性肺炎ということだった。

以前、“金八先生”という番組で桜中学の町内の老人役で出演した時、正月に餅を喉に詰まらせ掃除機を口に突っ込まれるというシーンがあった。誤嚥とはああいうものだと思っていた。しかし、よく訊くと眠っている間に呑み込んだ唾が口の中の細菌とともに気管から肺に入るという誤嚥の方が多いらしい。この齢で虫歯の治療をしている身としては文句の言いようがない。


春一番が吹いてやっと冬将軍から解放された頃、退院の許可が下りた。寝たきりではないにせよ、足掛け3ヶ月の病院暮らしで足腰の衰えは否めない。いざ、リハビリと意気込んでいたら、退院後の身の振り方が妙な展開になった。


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わけあって、退院してもすぐ自宅には戻れない。どこかでショート・ステイしてほしいとのこと。

なにしろ我が家は85才を過ぎた老人が3人いるため、日替わりで誰かがダウンしている。近頃は窮状を見かねた姪っ子たちが介護のケア・マネージャーを交えて、すべて差配してくれている。さすが高齢化社会を現役戦士として闘っている彼女たちの見識手腕は見事なもので当節は安心してお委せしている。


退院時、1週間ほどショート・ステイしてほしい、と姪っ子の一人から連絡があった。てっきりビジネス・ホテルにでも宿泊するものと思っていたら、同じ区内にある特別養護老人ホームだという。

話を聞いた時、一瞬、森繁久弥さんの「恍惚の人」に端役で出演したことを思い出した。崇敬する豊田四郎監督の作品で、その折「役者はなんでも観ること、そしてやってみることが勉強」と教わったことが脳裡に甦った。あの時の森繁さんのボケ老人役は凄かった。


・・・特別養護老人ホームとは。

・・・そこに暮らす老人とは。