俳優の団時朗さんが亡くなりましたね。NHKを含めほとんどの訃報記事が、民放の人気特撮番組「帰ぅてきたウルトラマン」で主人公を演じたことをリードにしています。しかし、わたしにとって団時朗さんはウルトラマンではありません。

 なんと言ってもMG5の「団次郎」。グレートデンを連れて颯爽とテレビCMに現れた若き「団次郎」なのです。

 資生堂の男性用化粧品MG5(エムジーファイブ)のCMに「団次郎」が登場したのは1967年(昭和42年)。わたしが神戸にある私立のN中学に入学した年です。中高一貫校であるN中学は、高校も含めて生徒は全員丸刈りでした。入学してすぐ、通学途中の阪急電車で座っていると、2歳年上で、神戸のカソリック系の女子校に通っている知り合いの女の子が途中の駅から乗ってきました。そして、いきなりサッとわたしの制帽を取り、わたしが丸坊主になっていることを確かめると「ふんふん」とうなずいて、そのまま別の車両に行ってしまいました。女学生に坊主頭を見られても、わたしは別に恥ずかしいとも何とも思いませんでした。

 ところが、そのN中で2年生の3学期に長髪が認められました。高校の上級生たちが、学校に反抗して丸刈り規則の撤廃を求めたからです。1968年。大学紛争の影響が高校にも広がり始めていました。影響は知らぬ間にわたしの頭髪にまで及んできたわけです(その後、中学3年の時に制服が廃止になり、私服が認められました)。

 坊主頭の髪が伸びて、横に分けられるくらいの長さになった時、わたしは、小遣いで初めて整髪料を買いました。それが、MG5のヘアリキッドです。それは未知の香りのする液体でした。鏡に向かって頭に少しだけ振ってみました。もう坊主ではないのだ。あの女の子にも見てもらい。その時、わたしは異性を意識しました。

 

 

 散歩のついでに新百合ヶ丘駅の近くのショッピングセンターに寄ると、男性化粧品のコーナーに黒と銀の市松模様を斜めにしたMG5の特長あるボトルが置かれているのが目に止まりました。ちょうど使っているヘアリキッドがなくなりかけていました。ボトルの容量が製品ごとに違うので、スマホの電卓を使って、値段を容量で割って1ミリリットルあたりの値を算して比べてみると、MG5は、わたしがいま使っている製品の3分の1以下の安さです。なるほど、これなら中学生の小遣いでも買えるくらいの値段でしょう。成分も随分とシンプルです。いまのわたしの薄くなった毛髪や頭皮に果たしてあうのかどうか。ボトルを手に取ったまましばらく迷いましたが、使ってみることにしました。なぜなら、「団次郎」のMG5は、わたしの思春期、青春の入り口に立つ記念碑です。若返るかも知れません(笑)。

                                 ###