なぜモリスはルビー、それもミャンマー産、
それも天然無処理で美しいものしか
探さないのか?
18年前に京都東山東福寺の中門の隣で
創業したとき…
宝石商として開業したものの、ご近所に
挨拶に行っても、親族を頼っても価値の良く
分からない「宝石」は敬遠されるばかり。
仕方ないので、古くなったジュエリーの修理、
リフォームのチラシを配って近所をまわった。
そしたら、ご近所のおばあさんが不動産の
事務所のようなモリスにお越しいただき、
「私の結婚指輪だけど、キレイなルビーで
娘に上げようと思うのだけど、形が古い
から今風な枠に変えてくれるかな?
おじいさんにもらった結婚指輪なのよ」と
ご来店いただきました。ルビーだった。
ほんとうに嬉しかった…が、お預かり書を
書くときに、そのルビーをルーペで観て!
人工合成石だったことが気付いた。
言いたくなかったが、言わないと納品の
時にルビーを入れ替えられた…とトラブルに
なる。考えた末に「持つ人にとってはまぎれも
ない宝石ですが、宝石商は、人工合成…と
いうものです」とお伝えしたら、おばあさん
「えっ…」といったきり黙り込んでしまい、
「おじいさんも知らなかったはず…騙され
ちゃったのね。私を騙すわけないし」と
おじいさんを庇う姿に涙がでそうになった。
おばあちゃんのおじいさんとの大切な思い出
がガラガラと崩れて行くのが分かった。
…これはいけない、と思い、宝石商が宝石と
呼ばないだけで、大切なおじいさんとの
結婚指輪なので、娘さんに受け継ぎましょう!
…と必死になって気を持ち直して頂こうと頑張って
お声がけしましたが、小さいおばあちゃんが
もっと小さくなって、「も~いいよ。私がお墓まで
持っていくから…そんなもの娘にあげたら、
あの人の恥さらしになるだけだし…と」
帰っていくおばあちゃんの姿は今も忘れられない。
思い出という心の部分を壊してしまったと感じた。
「…どうしよう…」、私が売ったわけではないが、
商売を始めたばかりの私には、ショックだった。
そして、どうせやるなら胸を張って宝石商をやろう
と。それなら自分で掘るしかない…と原産地へ
旅立ち、モリスルビーができた。
いまでも、
「ずっと宝物であるルビーをお届けする」のが
私たちの方針。
だから、香港、タイランドなどの集積地で馬鹿に
されようが、原産地ミャンマーで変わり者と言われ
ようが、私たちは、聞く耳を持たない。
おばあちゃんが落ち込んだ姿を天国から
おじいさんが見ていたらどんなにガッカリしたか?
…というわけ。
これからも、100年経ったらびっくりする様なお宝
ルビーを探し続けたい。