「茶碗ほど、計り知れないオーラ
を湛えた器があるだろうか。
茶をたてて飲む、ただそれだけの
ために綿々と進化を遂げ、制約の
あるなかで美を極められてきた。
焼き物の中でも最上位という位置
づけがなされているのは、みどころ
が多いだけではなく、表面的な色や
形以上の味わいが宿っているからに
ほからならない。
そもそも、茶碗は手に取って五感で
楽しむ器。茶の香りと温もりを
感じつつ…」
茶道、芳心会を主宰される
木村宗慎先生の「茶の湯デザイン」
では、お茶碗について
こう記されています。
お茶を頂くときに使う器である以上に、
そこに人がいて、その人が使った時に
どう感じるか?
というレベルが要求される点においては、
指輪(リング)に近いモノでは
ないでしょうか。
縁があって、
あの「橋本コレクション」を手に
取って拝見する機会を頂いた時に、
見た印象と着けた時の印象が全く違う、
手に取って着けた時に、
なぜその形なのか、その宝石がついて
いる理由が分かる。
そういうリングに数多く出会いました。
受け継がれていくお茶器と
同じことだと思います。
なぜ何百年、何千年も残って来たのか?
お茶碗とリングが良く似た価値観で
大切にされている様に感じました。
…大切に次に伝えるための「型」が、
しっかりしているのが茶道。
素晴らしいモノの来歴が箱書などで
持ち主の想いが、伝えられていく。
対して、宝石ジュエリー、指輪は…
素材価値が高いばかりに、
その形の意味が分からない
人に出会った時に、
ジュエリーの枠からはずされて、
再流通するなど、
元の形が変わってしまうものが
数多くあります。
とても残念です。
素晴らしいジュエリーに関しては、
お茶器を大切に伝えていく茶道を
お手本にしたいと思います。
写真は、橋本コレクション、
ルネッサンス期のギメルリングが、
婦人画報に記載されたモノです。
一番上のギメルリング、写真で見た
時よりも遥かに繊細で、小さい印象
がありましたが、それでいて頑丈に
つくられており、いまでも、
普段から使える状態でした。
このリングの持ち主が誰で、
どういう人生を送ったのか…分かると
もっと色々感じられるかも知れません。
「その持ち主は、どう生きたのか?」
そういう部分を大切にする日本の文化、
誇らしい日本の良いところとして海外
に発信していきたいと思います。
