世界有数の宝石コレクションを保有しているイギリス王室。
その守護石として受け継がれてきたルビーがあることをご存知でしょうか?
「黒太子のルビー」
イギリス王室における最高位の王冠「The Imperial State Crown」の正面中央部に取り付けられた鶏の卵状の巨大な赤い石。
カットされることなく、研磨のみ施されたこの石が、いかにイギリス王室の守護石となったのか…
1376年、カスティーリャ王国(現在のスペイン中央部)のペドロ1世は、クーデターにより王位を追われ、イングランドのエドワード皇太子に軍事援助を求めました。
エドワードは、求めに応じてカスティーリャに攻め入り見事、形勢を逆転し、ペドロを復権させたのです。その感謝のしるしとして贈られたのが、このルビーでした。
黒太子とは、エドワードの事。
100年戦争を起こした父、イングランド王エドワード3世のもと、16歳の頃から生涯のほとんどを戦場で過ごし、常に黒い鎧を身に着けていたことから、後に“黒太子”と呼ばれたといわれています。
歴史にその名を刻む宝石は、多くの伝説を秘めています。
エドワード王太子亡き後、ヘンリー5世が百年戦争の戦場へ赴く際に、兜の中央にこの宝石を取り付けました。1415年アジャンクールの戦いの際、フランス軍のアランソン公ジャン1世に兜を叩き割られますが、なんと宝石もヘンリー5世本人も無事だったそうです。
ヘンリー5世の死後、1485年には、リチャード3世が鎧に取り付けてバラ戦争に参戦したという記録もあり、こうして黒太子のルビーは、幾度もの戦いをくぐり抜け、戦場で代々のイギリス王を守護してきたのです。
19世紀ヴィクトリア女王の時代から、王冠に装着されるようになり、永くイギリス王の象徴として伝えられているのです。
世界で最も有名なルビーと言っても過言ではないこの「黒太子」のルビーですが、
さかのぼる事3世紀、実はルビーではなく、レッドスピネルであることが判明しています。
しかしながら、その類稀な美しさと歴史的背景から、王室の守護石として大切に受け継がれ、現在もロンドン塔宝物館に展示されています。
宝の石、宝石としての本来あるべき姿がそこにあるのです。


