私は興奮していた。

初めてのマラソン。自分の限界への挑戦。

そして、この祭を楽しむ3万人のうちの1人なのだということに。


飯田橋を右折して目白通りに。ランナーは皇居を目指す。

1キロ7分弱ののんびりペースなので、

一緒に走っている先輩と会話を楽しみながら走っていた。


雨と寒さのせいか、道端で用を足すおじさんランナーたち。

それも仕方ないか。なにせトイレはものすごい混みようなのだ。

軽く15分は並ぶだろうね。オイルショックならぬ、トイレショックだ。

それを見て、水分を取り過ぎないようにしようと心に決めた。



すべては順調だった私に異変が起きたのは

皇居を右に走る、まもなく8キロの地点だった。



左ひざに違和感。


まさか。


練習では20キロも走れた。ヒザが痛くては走れない。

だってまだ8キロ地点。まだ30キロ以上もあるのに!



まだ大丈夫、まだ大丈夫。

気のせい、気のせい。

先輩に気づかれないように、ごまかしながら走る。

20キロまでは一緒に行こうと約束したのだ。

もう痛いだなんて言ってられませんわ!


日比谷の10キロ地点を通過。

左だけでなく、右ひざにも違和感が出始めた。

きっとかばって走ったからだ。


12キロを通過して第一京浜へ入る。

違和感じゃない。もう痛みに変わり始めていた。

1キロ7分ペースもキツクなり、やむなく先輩にこう告げる。



「先に、行ってください」



私のヒザがあまりよくないというのを知っていた先輩は

「無理するな。ゴール地点で待ってる」と言ってくれた。


悔しさと情けなさでいっぱいになりながら戦線離脱。

遠くなる先輩の姿はすぐにたくさんのランナーの中に消えていった。



こうして、残り30キロ。

地獄の一人旅がはじまるのだった。



ホントにごめんなさい。まだ続きます。