自閉症スペクトラム グレーゾーン
大きな橋、自動車の通る脇の道を夫と歩いていた。土手をつなぐ川をまたいで架かる大きな橋。橋の上から覗く川面。前に見た自転車を探すわたし。川面に見えていた川の中に沈んでる自転車。「あれ、ないかな」「何が?」と夫。「自転車」「ああ、あった」後ろの車輪が浮き上がる形で沈んでいる自転車。ハンドルは見えない。以前見た時は見えていたんだけど。自転車があってなんだか安心したわたし。なんで安心するのか、自分でもよくわからない。「そこは、川の曲がり角だから、川の流れが堰き止められるんだよ」と夫。「だから流されないんだね」とわたし。夫はそれから、川の流れと堆積物の話をしはじめた。よくある話で、わたしは取り残される。わたしの頭の中にあるのは、目の前の川と流されなかった自転車だ。もやもやする。最近、自分が自閉症スペクトラムだと気がついた。ASDのグレーソーンだ。更年期を迎えた頃から、今まで我慢してきたことが、丸ごと我慢できなくなった。人に合わせること。周囲を観察して、ちょうどい感じに自分を演じること。身体中が悲鳴をあげてしまう。自分に起こってしまうことを喚くように何度も夫に話して聞いてもらっても、どうにもならなくて、AIに相談してみて、ようやっと気がついた。物事の受け止め方が全く違うんですよと。元々の脳の働き方が違うんですよ。AIが画面の向こうでスラスラと答えてくれた。直感的で感覚的で、深く感じてしまうようですね。と。要約すると自閉症スペクトラムということだった。それから、自分にとって適切な人との距離感や、関わる人を自分で選んでいいこと。苦手な人は避けてもいいこと。コミュニケーションのバリエーション。話しかけられても軽い会釈でスルーしてもいい。予定を立ててから行動する。一人の時間を大切にする。と、自分のルールを決めた。日々の暮らしの中、わたしの中にできあがっていた他人軸をやめ、自分軸のルールを自分の中で持つようにした。いい人になるよりも、自分にとって居心地のいい自分を選んだ。夫と二人で橋を渡る散歩。夫との会話にもやもやしても、元々脳のあり方が違うから、見ている世界が違うんだからと、自分の頭の中にあることを夫にわかってもらおうと、説明する必要もなくなった。大きな橋。土手をつなぐ橋。川の底には自転車が沈んでる。持ち主は探しただろうな。投げ捨てられたのか、土手下まで運んでこられて、川面に放り出されたのか。川の底。土手底の泥に埋もれて、生き物の棲家になっていく自転車。