皆様こんにちは。栄養を科学する抗加齢歯科医、森永宏喜です。
いま、腸内環境に関心のある歯科関係者の間でちょっとした話題の論文。せっかくのOpen Articleですから、当然原典にあたります。私のような開業医にはとても有難いです。
文献レンタルサービスには加入していますが、それでも要約しか読めない文献も沢山あります。といって個別に購入するとなかなか高価です。10本も入手したら数万円かかってしまいます。多くの文献を自由に閲覧できる、大学や研究機関に所属している先生方が羨ましいです。
私は読み込むときにはやっぱりプリントします。PDFの方がスマートでしょうけど、スクロールがもどかしいし、アンダーラインも引けませんからね。
さて本題ですがこの論文、新潟大学の山崎先生のグループの一連のお仕事です。マウスを使った、ここ数年の研究成果には目を見張るものがあります。
この研究で一番重要なことは
「飲み込まれた歯周病原細菌 Porphyromonas gingivalis がkeystone pathogenとして腸内細菌叢の構成を変化させ、腸管免疫系が Th17 優勢になり、関節炎の病態形成に重要な炎症性サイトカイン IL-17 の産生を亢進させる」ということです。
ここでいう関節炎はリウマチ性関節炎に代表される自己免疫疾患を指します。Th17(ヘルパーT細胞17)が産生するIL(インターロイキン)17は自己免疫疾患の進展に深く関わると言われています。
P.gingivalisがここで重要な役割を演じる、というところまでは分かってきたわけです。
そしてこれから。論文の最後でも触れられていますが、
☆特定の腸内細菌がTh17の分化と活性化に関わるかはまだ不明」
P.gingivalisはTh17が優勢になることの「きっかけを与えるだけ」あるいは「環境を整えるだけ」なのかも知れません。実際にTh17の分化成熟に関わるのは別の細菌という可能性もあります。恐らくそれをいま、しらみつぶしに調べているのでしょう。最新の遺伝子解析技術はそれを可能にしていますから。
☆P.gingivalisを抑え込むことで関節炎の悪化を防げるかは未解明
これはぜひ、ヒトでの臨床データが望まれますね。可能ならRCT(ランダム化比較試験)で結果が出れば、「全身の健康と口腔の関係」の重要性の大きな説得力になります。
まあ論文に書くぐらいですから、恐らくこの2点とも発表できる段階にかなり近づいているのでしょう。
これからが益々楽しみです。全ての医療関係者に認識してもらいたいと思います!
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◆目次
序章 口の中の恐ろしい「もの言わぬ病」
第1章 全ての病気は歯から始まり、腸に至る!
第2章 認知症の原因も口の中にあった
第3章 食べていると確実に死に近づく食べもの
第4章 自分でできる歯と口のケア
第5章 いい歯科医とダメな歯科医
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