皆様こんにちは。
栄養を科学する抗加齢歯科医、森永宏喜です。
10月に主催するOMDセミナー、着実にお申込みを頂いていて嬉しい限りです。今回の会場はそれほど広くないため、スタッフ間では
「われわれはテーブルなしのイスのみか?」
などということも現実味を帯びて語られはじめました。
一般的に、カウンセラーと呼ばれる仕事では「相手の話に耳を傾けること」が大事だといわれることが多いですよね。「傾聴」という表現をされることも多く、コミュニケーションをとるためのスキルとして欠かせないと言われています。
では栄養療法のカウンセラーに求められるスキルはそれでだけいいのでしょうか。
もちろん「聴くこと」が重要なことに変わりはありませんが、それと同じか、あるいはもっと大切な能力があると考えています。それは「必要な情報を聞き出す力」です。
栄養療法を必要とされる患者さんは、自覚症状として現れている栄養素の不足のほかに、潜在的な栄養欠損を抱えていることが普通です。むしろ表に現れない不足のほうが大きいと言っていいでしょう。あるいは症状が出ていても「それが栄養不足からきているとは夢にも思っていない」というのは決して珍しいことではありません。
栄養素は、それ単独ではたらいていることはむしろ例外的で、それぞれがお互いの活性化度を調整したり、相補的に作用したりして生体の恒常性を維持しています。オーソモレキュラーに基づいたアプローチでは、それらの栄養素を総合的に補充していきます。目立つ症状にだけ着目していたのでは病態の改善を得ることは難しいことが多いのです。
ではそのような潜在的な不足をどのように判断するのか。もちろん最大の武器は血液をはじめとする検査所見の解析ですが、それと同等に欠かせないのが「解析結果を補完する患者さんの情報」です。
潜在的な情報ですから単に「傾聴」しているだけでは得ることは出来ません。各種の検査結果から可能性のある症状を確認し、時には五感をも駆使して
「患者さんの言われていることは本当だろうか、自覚していないだけではないのか」
ということまで考えて
「そう言われてみると、確かにそうだ」
とか
「そんなことまで関わるのか」
と患者さんが気付くような事実を「聞き出してくる」必要があるのです。
ここに栄養カウンセラーの大きな役割があり、また力量を問われる点でもあります。
もちろん、そういうことがすぐに出来るようになる訳ではありません。栄養療法の基礎をしっかりと学び、経験を積んでいけば段々と実力はついてくるでしょう。焦る必要はないと思います。
しかし何事もそうですが、スキルを身に着ける近道はその道の「達人」に教えを乞うことでしょう。その意味では今回講演をお願いしている伊藤夕里亜さん以上の適任者を私は知りません。
期待して頂きたいと思います。きっとその期待以上の世界を垣間見ることが出来るでしょう。