野球の采配と同じように、人生のターニングポイントでは「左へ行くべきか、右へ行くべきか」という決断をしなければならない。そして、左右どちらの道を進もうとも、別の決断をした未来を見ることはできない。
あの時、別の道に進むべきだったか。
齢を重ねるほど、あるいは人生がうまくいっていないと感じた時ほど、そうやって自分の人生を振り返るものだろう。だが、自分が歩んできた道は、既に歴史になっているのだ。ならば、「これでいいんだ」と踏ん切りをつけることが、その先に進んでいくための原動力、次への一歩になるのではないか。私はそう考えている。

どうすれば成功するのか、どう生きたら幸せになれるのか、その答えが分かれば人生は簡単だ。しかし、常に自分の進むべき道を探し求めること、すなわち自分の人生を「采配」することにこそ、人生のだいご味があるのだと思う。

人や組織を動かす以上に、自分を動かすことが実は難しい。それは、「こうやったら人にどう思われるのか」を考えてしまうからである。だからこそ、「今の自分には何が必要なのか」を基本にして、勇気をもって行動に移すべきだろう。

from 「采配」 by 落合博満