社員は、会社に誠実さが認められない限り、正直にはなれません。
人は、契約書や宣伝広告で、会社が顧客に約束したことにたいして誠実であることに誇りを感じたいものなのです。
もしそこに、偽りやごまかしがあれば、社員の会社に対する想いは薄れます。
その結果、社員は、給料のためだけに働くようになり、周りの人に会社のことを誇りを持って話さなくなります。

セムコ社では、清掃係の女性も、幹部役員と同じくらい貴重な存在です。しかし、頭の固い大企業の人事担当者は、私の言葉を信じないでしょうし、理解できないでしょう。
ある日、弊社の電子秤の組み立て工場で、当時CEOを務めていたロジェリオ オットリアが清掃婦と交わした会話を紹介しましょう。
ロジェリオは清掃婦に「君の仕事は何だい?」と訊いたそうです。
彼女は間髪を入れずにこう答えました。「私は電子秤を組み立てています」
まさにこれ、このことなのです!これこそが「組織内のどんなところにも才能がある人材がいる」という本当の意味なのです。
その清掃婦は、自分の仕事の意義は、単に箒やバケツをもって掃除しているのではない。それ以上に、その仕事が、会社の発展に貢献しているのだと自覚していたのです。彼女は、自分が他人から見下されたり、レッテルを張られたり、誰にでもできるどうでもいいような仕事をさせられているとは、考えていないのです。
彼女は、工場が清潔に快適に存在しているのは、自分が仕事をしているからだと考えたのです。
実際にセムコ社では、スタッフだけでなく清掃スタッフも、社の業績を話し合う月次会議に参加しています。
セムコ社で働くすべての社員が、会議に参加し、収益状況や人件費を把握でき、競合他社との違いや、どうなると利益が増えるかについて学びます。
こうすることで、清掃婦の態度に見られるように、全社員が会社に与えてくれる価値が、成長と利益、そして会社が今後何年にもわたって存続する機会をたしかなものにしてくれるのです。

by Ricardo Semler 奇跡の経営 The Seven-day Weekend