定年後を豊かに生きる生活設計講座

定年後を豊かに生きる生活設計講座

50歳を過ぎてから、30年間近いサラリーマン生活を辞めて、社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)として独立しました。主に講演会、セミナーなどの講師をさせてもらっています。定年前後のライフプランに参考になることを発信します。

Q:年金のもらい始めを遅らせる「繰り下げ」をすると受取額が増えると聞きました。近く75歳まで可能になり、金額も倍近くに増えるとか。利用する際の注意点を教えてください。

A:老齢年金の受給開始は原則65歳ですが、希望すれば60~70歳の好きな時期からもらい始めることができます。66歳以降に遅らせることを繰り下げ受給といい、1カ月遅らせるごとに年金額は0・7%増えます。現在の上限の70歳まで遅らせると65歳でもらう金額より42%増えます。その間は年金ゼロですが、それをしのげば増えた年金額を終身でもらうことができます。


 国はこの上限を75歳まで延ばす方針です。国会で法案が成立すれば、2022年4月から75歳まで繰り下げが可能になります。75歳からだと金額は65歳より84%増える計算です。
 

 こうした繰り下げを選ぶのが得かどうかは、どれぐらい長生きするかによります。単純計算ですが、75歳からもらい始める場合、合計の年金額が通常の65歳開始を上回るのは86歳です。繰下げを始める65歳の男性は平均余命が19.7年なので平均で84.7歳まで生きますが、損益分岐点の86歳に達しない可能性が高くなります。一方の女性は89.5歳まで生きるので分岐点を超える人が多くなります。
 

 繰り下げは男性より長生きする確率が高い女性に向いた制度といえます。注意したいのは、妻の老齢厚生年金が夫が亡くなった後にもらう遺族厚生年金(通常は夫の老齢厚生年金の4分の3)より少ないケース。夫婦ではよくあります。この場合、遺族厚生年金は妻の老齢厚生年金を差し引いた額しか支給されません。厚生年金の合計額を増やそうと妻が自分の老齢厚生年金を繰り下げても、元の老齢厚生年金が少ない場合、遺族厚生年金を減らすだけで増額の効果は得られなくなってしまいます。
 

 老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰り下げることができます。女性は繰り下げるなら、老齢基礎年金だけにするのがお薦めといえます。
 

働きながら受け取る選択肢も 社会保険労務⼠ 森本幸⼈さん


 「働くと年⾦を減らされて損」と考える⼈も多いようですが、必ずしもそうとは限りませ ん。在職⽼齢年⾦制度では60歳以上65歳未満の⼈が厚⽣年⾦と合わせて28万円を超える収 ⼊を得ると年⾦が減額されますが、年⾦の受給開始年齢は引き上げられています。65歳から 年⾦をもらう⼈には28万円の上限は関係ありません。
 65歳以降に働く場合は、厚⽣年⾦と合わせて47万円まで稼げます。平 均的な収⼊の⼈の厚⽣年⾦額は10万円程度ですから⽉37万円も稼げま す。また雇⽤関係のないフリーランスで働くなら、同制度は適⽤されま せん。仕事を続けると収⼊も増え、外出することで⾃然と運動になって 健康管理ができたり、社会とつながり続けたりすることにもなります。 ⻑く楽しく働き続けて、⽼後を豊かに過ごしてほしいものです。


(聞き⼿は岡⽥真知⼦)
 

金融庁が発表して大騒ぎになっている「老後の資金2000万円不足問題」で日経新聞に取材されました。

 

老後の資金が公的年金だけでは不足するというのは、FPの間では常識としてとらえられていることで今回大きな騒ぎとなったことにかえって驚きました。

 

金融庁の試算では2000万円ですが、収入や支出の前提を変えれば3000万円ぐらい不足することも大いにあり得ます。

 

金融庁が大げさに発表したわけではないのですが、それでも今回の騒動になったのは多くの人が何となく老後のお金の問題に不安を持っていることの現れです。

 

金融庁は、「だからお金を運用して老後の不足資金を補いましょう」と言いたかったようですが、残念ながら「2000万円不足」が独り歩きして本当の趣旨が伝わりませんでした。

 

日経新聞の記事にも書いてもらいましたが、一般の人が老後のお金を少しでも増やすのにお勧めは、長く働くことです。それも厚生年金に加入して働くことです。こうすることで働いた賃金とその間に増やせる厚生年金が老後の資金を増やしてくれます。