森森子!!

森森子!!

DJダイノジ所属、森森子が綴る日常

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『また今日も置き去りだ』

朝8時45分
一仕事終えた充実感を味わう暇もなく
また今日もここから、俺の孤独が始まる

相棒が戻ってくるまで俺は1ミリも動けない
またこの街の景色をボーっと眺めることになる

最近じゃあ暇すぎて暇すぎて
犬っころが俺の前を何匹通るかを数えてる
そんなことして、面白いかって?
そんなイジワルな質問はしてくれるな

昨日なんか、数えてた犬っころがやけに近づいてくるなと思ったら、突然ションベンぶっかけられたのさ。ふざけるなよ、本当に。
また俺のボディーが錆びちまう。
ただでさえギーギーギーギー鳴っちまうんだ
俺が動けなくなったら
オマエが相棒を背中に乗せて家まで送ってくれんのかい?なあ、犬っころよ。
こちとら送迎の大ベテラン、スペシャリストだ
あいつには俺しかいないんだよ
縄張り争いなんか外でやってほしいね

まー、それにしても相棒の野郎だ、問題は
またスーツに赤いリュック背負ってやがった
こんだけ道行く人間達を見てたら大体わかるが
あんな組み合わせは絶対になしだろう
相当、やばいヤツだよ
相棒、自分の歳、わかってるか?

でも、あの赤いリュック
オマエが初めて背負った日、俺はまだ覚えてるんだぜ。高校の修学旅行に持ってくために、母ちゃんに買ってもらったんだよな

俺とおんなじ赤色。
オマエはずっと赤が好きだよなあ
あん時はまだまだ俺もオマエも若かった
毎日の様にオマエのダチと走り回ったよな
オマエは学校から帰ったらすぐに着替えて
俺のハンドルを握りしめたんだ
あの瞬間が、俺の生きがいだった
ワクワクがこっちにまで伝わってきてたんだぜ
なあ、あん時の俺たち無敵だったよな

なあ、相棒
あれから、もう30年だぜ 
本当、早いよな

俺もオマエも赤いリュックも
随分くたびれちまった
オマエなんか最近じゃすっかり白毛だらけだ
この頃は、オマエのケツの骨がゴリゴリと俺のサドルに当たるんだ。いてえんだよ
母ちゃんもボケてきただろ?
この前も危うく捨てられそうになっちまったよ

ところでさ、相棒
俺、時々おもうんだよ
なんで、俺たちこんな長年の付き合いになったんだろうなって

俺、バイクだったらもっと速くオマエを乗せて運べたかもしれないよ

俺、車だったらたくさんオマエの大事な人を乗せられたかもしれない

俺、飛行機だったらもっと遠くまでオマエを運べたかもしれないし

俺、新幹線だったらもっと快適にオマエを運べたかもしれない

なあ、そう考えると俺
なんにもできないんだよな
笑っちまうよ
気づかないフリしてたけどさ
本当はわかってたんだ
俺ってもう、誰にも見向きもされないオンボロ自転車なんだよな

ついでにいうけど
さっきも少しかっこつけすぎたんだよ
今だってオマエが俺のハンドルを握る瞬間が、最高の生きがいなんだ



今日は犬っころ11匹だったよ
発泡酒とエロ本買って
そろそろオマエは帰ってくるだろう
俺のボディーの限界も、あと数ヶ月かな
ここまで突っ走ってきたんだ
終わる時くらい大体わかるさ

相棒、俺のこと

ずっと大切にしてくれてありがとう

でもやっぱり
でもやっぱり
でもやっぱり

明日も明後日も明々後日も
ずっと同じ日常が続けばいいな
俺にはオマエしかいないんだよ

相棒との毎日が楽しいかって?
そんなイジワルは質問はしてくれるな