コスモスレ・ミゼラブルヒマワリ
ヒマワリ少女コゼット  ストーリー詳細
コスモス

第29話 テナルディエの罠
 マリウスは夢を見ているようでした。半年間探し続けたコゼットが壁の向こうにいるのです。ジャン・ヴァルジャンとコゼットは俳優のファバンティアを名乗るテナルディエに食べ物と暖かい服を差し出しました。ところがテナルディエはやって来た金持ちの男の顔に見覚えがありました。それは忘れもしないコゼットを連れ去ったジャン・ヴァルジャンだったのです。テナルディエはその事は胸の内に秘め、運命の巡り合わせに感謝しつつ、ジャン・ヴァルジャンへの復讐を誓います。そしてエポニーヌもコゼットに見覚えがありました。それはリュクサンブール公園で隣に住んでいるマリウスの恋した人だったのです。テナルディエは早速お金の無心を始めました。半年間溜めた家賃の60フランを明日までに用意しないとこの寒空に部屋を追い出されてしまうと言い出したのです。ジャン・ヴァルジャンは今は手持ちが5フランしかないからと言ってその5フランをテナルディエに渡すと、家に戻って60フランを取ってくるから6時にはここに戻ってくると約束し家に戻っていきました。
 隣の部屋で一部始終を覗き見していたマリウスはジャン・ヴァルジャンが部屋を出て行くと慌てて追いかけました。そして馬車で走り去っていくジャン・ヴァルジャンを追ってマリウスも馬車を走らせようとしますが、昨日お金をエポニーヌに恵んだばかりだったので、馬車代を払う事ができずジャン・ヴァルジャンを追いかける事はできませんでした。馬車の中でコゼットはジャン・ヴァルジャンに、もうゴルボー屋敷に行かないでほしいとお願いします。コゼットは気付いていました。ファバンティアを名乗る男がワーテルロー亭のテナルディエそっくりで、エポニーヌやアゼルマもいた事に。それを聞いたジャン・ヴァルジャンはモンフェルメイユ村にいるはずのテナルディエとパリで出会うとは信じられませんでした。
 テナルディエは悪事を企みました。パトロン=ミネットのメンバーであるバベを呼び出すと、6時に事を起こすからとパトロン=ミネットを集めるように依頼します。しかしそれをマリウスが聞いていたのです。マリウスは慌てて警察署に駆け込むとジャヴェール警部に一部始終を報告しました。ジャヴェールはテナルディエがパトロン=ミネットのメンバーでないかと考え、パトロン=ミネットを一網打尽にできるチャンスだと考えたのです。マリウスはコゼットを助ける事ができ、ほっとしましたが、ジャヴェールはマリウスを善良な市民と見込むと、拳銃を取り出して依頼をしたのです。
 コゼットはジャン・ヴァルジャンが再びゴルボー屋敷に行く事を反対しました。テナルディエはジャン・ヴァルジャンを恨んでいたのでジャン・ヴァルジャンに何をするかわからないと言うのです。しかしジャン・ヴァルジャンは相手がテナルディエかどうか自分の目で確かめてこようと言います。そしてもしもテナルディエ一家であれば、なおさら彼らを見捨てるわけにはいかないと言うと、一人でゴルボー屋敷へ向かってしまうのでした。
 6時前になるとエポニーヌとアゼルマは通りの見張りに行かされます。おじさんが60フラン持ってくるだけなのに、なぜ通りを見張らなければならないのかエポニーヌには理解できませんでした。マリウスが隣の部屋を覗き見すると、テナルディエは斧やロープ、鉄パイプを用意し、ジャン・ヴァルジャンに積年の恨みを晴らす準備をしているのが目に入りました。そして腕っ節の強そうなパトロン=ミネットのメンバーも続々とゴルボー屋敷に集まってきました。そして6時ちょうどにジャン・ヴァルジャンが馬車に乗って、ジャヴェール警部率いる警官隊が包囲するゴルボー屋敷にやって来たのです。
 ジャン・ヴァルジャンはテナルディエの部屋に入ると約束の60フランを渡します。しかしそれを受け取ったテナルディエは「世の中にはまったく慈悲深い人がいらっしゃるものだ。見ず知らずの者にポンと60フラン恵んで下さるなんって。だが、これっぽっちのお金では溜まった家賃を払ったら終わりだ」と言うと、パトロン=ミネットのメンバーが手に手に武器を持って部屋に入ってきたのです。そしてテナルディエはワーテルロー亭の看板として掲げていた絵を5000フランで買ってくれたら丸く収めようと提案しました。隣の部屋で覗き見していたマリウスは今こそ拳銃を天井に向けて撃ってジャヴェール警部に合図を送り、警官隊を突入させる時が来たと考えていました。ところがジャン・ヴァルジャンが自分の事に気付いていないと考えたテナルディエは自分がテナルディエだと名乗ったのです。隣で聞いていたマリウスは驚きました。テナルディエはマリウスの父が恩返ししなければならない相手だと遺書に書かれていた相手だったのです。