■BOOK「猫を抱いて象と泳ぐ」小川 洋子/作


これはamazonで絶賛だったので、読んでみました。


読んでみれば、ある一人のチェス指しの生涯を通して

人の生き様を問いかける、というような本だった。


本の半ば程は、正直「このままずっとチェスの話か~」と思ったのだが

読み終えてみれば、こんなにも美しい話があったのか、というような気分になった。


これは決して新しい話ではないのだが、

小川洋子さんにしか描けない本であることは間違いない。

残酷な世界の中に美しさがある、そんな小川ワールドが好きです。


ウィキペディアによると、アリョーヒンというチェス選手は実在して、

本当に「盤上の詩人」と呼ばれていたそうだ。


私はチェスをしないので、辛うじてルールの概ねだけわかる、という程度なのだが

チェスはこんなにも奥が広いのか、それならばやってみようじゃないの、

と思ってしまった。

そして、小川さんの言葉巧みさに感服。


一番印象的なのは「チェスの世界は自分だけで作るのではない。相手と一緒に作るのだ」

ということ。私たちが生きている世界も、人が人を作るといいますが、

いつも誰と話しているかによって、どのように自分が確立していくか、その方向が決まって来ます。

相手あってこその自分。

だから、どんなときも、相手に思いやりの心を忘れてはいけないんですよね。

とは言っても、この本の主題は、生まれたときから身体が人と違ってしまった主人公の

人生物語に尽きる。


少年は、決して恵まれていないし、一種の「障害」といっていいハンデもある。

その少年が、心清らかな人たちと接する中で、すくすくと自我を持って

成長していくわけである。


そうすると、この少年がとても幸せに見えてしまう。


でも、この少年は、実際今生きている私よりも得ているものって何か。



私が今頭にある今後の人生において、この少年の人生と重なる部分は何もなかった。

それなら、今私が進もうとしている未来には幸せはあるのか。

私は何かを見落としているのではないか。


ふと、そう考える。