みなさんこんにちは。参議院議員の森まさこです。

 

8月11日に、キリロムグローバルフォーラムのセッション「日本からカンボジアへの投資を増やすための課題」に登壇いたしました。お相手は、ソク・シファナ氏(カンボジア政府上級顧問)で、モデレーターは、猪塚武氏(キリロム工科大学理事長)です。


全員が抗原検査を受けた上で、新型コロナウイルス感染症対策を万全にして開催されました。

私からは、法的観点から見たカンボジアの現在の課題とその解決策についてお話しいたしました。これはカンボジアだけでなく、フィリピンやベトナムなど、その他の東南アジアに進出する日本企業にとっても同様の問題です。

 

1 カンボジアの現在の状況と課題

まず、カンボジアの現在の課題としては、「法の支配の強化」が挙げられます。

カンボジアは、ベトナムとタイを結ぶ南部経済回廊の要衝に位置し、地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る国であり、近年では製造業の発展や産業の多角化が進んでいて、投資環境の整備もなされています。

日本は昔からカンボジアの主要援助国であり、カンボジアも親日的な国民性があり、両国は非常に良好な関係にあります。カンボジアへの日本企業の投資は増加傾向にありますが、トラブルが起きた際に、カンボジアの裁判所では公正な裁判が行われず、解決が難しいのが現状です。

 

2 法の支配の強化に向けた解決策

 これまでに日本は、司法外交としてカンボジアの民法や民事訴訟法の作成などの法制度整備支援を行なってきました。

また、2018年4月,法務省に大臣官房国際課が新設され、JICAと協力しながら法整備支援や人材育成といった「司法外交」を本格化させてきました。

現在はPhase5で、実務運用を改善するため、書式令作成や判決書の公開を支援しています。


支援方法としてはワーキンググループ活動やセミナー、研修で、JICAにより派遣された検事や裁判官、弁護士が長期専門家として現地に常駐し、支援を実施しています。これらの他にも、司法試験の作成支援なども行うことで、法の運用の適正化を図ることができると考えます。

 

このように司法外交を強化することの他に、留学制度を利用した人材育成が解決策としてあげられます。カンボジアでの優秀な法律家、弁護士の育成を目指して、日本への留学を促進し、日本における判例検索制度や裁判の方法などを学んでいただきます。現在でも文部科学省や外務省の行っている留学制度があり、その制度を利用された方が、カンボジアに戻られて優秀な法律家として活躍されています。

また、弁護士を強化し、優秀な法律事務所を作ることも人材育成の面から有効であると言えます。タイでは日本の弁護士事務所が現地の弁護士事務所を買収し、弁護士の質の向上に成功しております。カンボジアでも同じような取り組みが可能なのではないでしょうか。

さらに、日本企業とカンボジア企業との間で紛争が起きた時の解決方法として、裁判ではなく仲裁を用いることも日本企業のカンボジア進出を促進する上で有効ではないでしょうか。日本国際紛争解決センター(JIDRC)は、日本における国際仲裁や国際調停に寄与すべき機関として、大阪に2018年、そして東京には私が法務大臣であった2020年に初めてオープンしました。


この施設は、国際紛争が起きたときに、証人尋問等を行う場所です。実際に、2021年の東京オリンピックで起きた紛争17件のうち13件の事件の証人尋問をここで行いました。日本には2018年まで仲裁施設がなく、日本企業が国際仲裁を利用するには、ホテルで証人尋問を行うか、海外の仲裁機関まで行くしかなかったため、多額の費用をかけてまで仲裁を利用する日本企業はあまりいませんでした。しかし、JIDRCができたことで、当事者は日本にいながら証人尋問を行うことができ、費用も安く済みます。また、仲裁人、仲裁機関は双方当事者が適切な手続きを経て決定するため、どちらかの国で裁判をするのとは違い、中立的な立場から紛争解決ができます。

日本企業が安心してカンボジアを含め東南アジアに進出できるように、これからも尽力していきます。