みなさん、こんにちは。参議院議員の森まさこです。

 

私はこれまで、①3月30日 ②4月8日 ③5月13日 ④5月18日 計4回、法務委員会にて「取調べの弁護人立ち会い」について質問してまいりました。

今回は、その「取調べの弁護人立ち会い」について詳しくご紹介いたします。

 

●3月30日 法務委員会

私が大臣時代に法務委員会でも様々な多くの御指摘をいただきましたことを踏まえて、法務・検察行政刷新会議を七月十六日に設置いたしました。

冒頭の私の大臣挨拶の中で、法務委員会での指摘を踏まえた刷新会議で話し合うべき三つの柱が書かれております。三つ目の柱、資料二でいいますと二ページ目になる第三にと書いてあるところについて質問をしました。

 カルロス・ゴーン氏の海外逃亡を契機に、日本の刑事司法制度について国際的に様々な御指摘がありました。誤解がございました。そのことについて、京都コングレスのサイドイベントも、私が新たに日本の法制度についてのものも作りまして、上川大臣の下で全日オンラインで放映をしていただきました。

 しかし、一点だけ誤解でない点があります。それは、取調べに弁護人の立会いがないという点です。これは、残念ながら、カルロス・ゴーン氏に指摘されて、違いますと言うことができないものでございます。これについてしっかりと検討していくということが三つ目の柱でございました。

 資料三をご覧頂くと、この法務・検察行政刷新会議の第六回の中で法務省が注目すべき発言をしております。

それが十六ページの下段にございますが、取調べの弁護人立会いについて、下から四行目を見ますと、検察庁において公式に弁護人を取調べに立ち会わせないという方針決定がなされているとは承知しておりませんと言っておりまして、つまり、弁護人を取調べに立ち会わせるということは別に法で禁止されていないし、できると述べた上で、その下から、検察の裁量によって弁護人を立ち会わせることができるんだという趣旨のことを述べているんです。しかし、皆さん御存じのとおり、実際に立会いというものは行われておりません

 そこで、この点について私は引き続き法務省で検討していただきたいと思っているんです。

 刑事局の答弁は、刷新会議で私が示した三つの柱のうち二つはガバナンスPTで取り上げ、残る一つのこの取調べの弁護人立会いについてはまだ決まっていないというようなものでした。カルロス・ゴーンの逃亡から本当に国際的に批判を浴びています。この取調べに立会いがないということは捜査方法とのバランスがあるというような説明がなされていますが、それは制度設計によると思いますので、是非これからも適切な検討をしていただくようにお願いいたしました。

 

●4月8日 法務委員会

 取調べの弁護人立会いについて、前回は刑事局長の御答弁でしたので、大臣に答弁をいただきたいと思い、質問いたしました。

 取調べの弁護人立会いがないことは、ダボス会議を始め海外から批判をされています。京都コングレスのサイドイベントでも、日本の制度に好意的なアメリカ学者でさえ、この問題だけは指摘をしておられました。

 前回、刑事局長が答弁をなさった内容ですが、今回、大臣が御答弁をいただくということで、議論を分かりやすく整理したいと思いまして、資料を準備いたしました。

 資料三を御覧ください。

刑訴法の改正がございました、その附則九条によると、一項で録音、録画の見直し、二項で「前項に定めるもののほか、」とありますから、見直しの対象は録音、録画に限らないことは明らかです。つまり、取調べの立会いが三年後の見直しの対象ではないと言い切ることはできません。

 さらには、資料四の四ページを御覧ください。

 今年の二月十六日、法務省政策評価会議で、法務省自ら、三年後見直しを含む適切な時期に見直すと答弁しているのです。この答弁は法務・検察行政刷新会議の報告書に触れておりますが、それは資料五の十ページと資料六の二十三ページにございます。

 

資料六を御覧ください。資料六の二十三ページ、これは昨年十二月二十五日頃に、上川大臣宛てに鎌田座長から手渡されました。ここに法務大臣に対する記述があります。

そもそも、改正法の録音、録画が法制審に諮問される前提となった法務省内の検討会である検察の在り方検討会議では、取調べの立会いが議論に上がっていました。というのも、改正の発端となった検察のフロッピーディスク証拠偽造事件の村木厚子さん本人が検察の在り方検討会議のヒアリングで取調べの立会いの導入を求めているのです。しかし、検察の在り方検討会議の取りまとめ後、録音、録画だけが諮問されたのです。

 ですから、改正の三年後の見直しでは、録音、録画だけで足りるのか、取調べの弁護人立会いが必要なのかを議論すべきことはむしろ当然と考えています。三年後とはいつか。令和五年に当たります。令和五年を見据えて、先ほどの資料六の刷新会議の報告書を踏まえて、いつ取調べの弁護人立会いについて検討を開始するのか。また、どのような場で行うのかを上川大臣に質問いたしました。


〈上川大臣のご答弁〉

被疑者の取調べへの弁護人の立会いの制度について、法務・検察行政刷新会議におきましても、制度の導入を求める意見がある一方で、現行法の下でこの制度だけを導入した場合の支障についても強い懸念を示す意見もあるなど、様々な御意見が示されたものと承知しております。

 この制度につきましては、平成二十八年の刑訴法の改正に先立つ法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会におきまして議論をされたものでございます。取調べの在り方を根本的に変質させて、その機能を大幅に損なうおそれが大きいという問題が指摘されまして、その上で導入しないということとされたものと承知をしております。

 したがいまして、被疑者の取調べへの弁護人の立会いの制度につきましては慎重な検討を要すると考えておりますが、私の方から刑事局に対しまして適切に対応するよう指示をしたところでございます。

 法制審議会、また法務・検察行政刷新会議での様々な御意見も踏まえつつ、適切に対応していくものと承知をしております。


 

 上川大臣から刑事局に指示がなされたということでございますが、その後の刑事局長の答弁が、指示をされた割には積極的な対応を感じさせないものであったものですから、今回、再度質問いたしました。是非、大臣から更に、再度、三年後の見直しを含む適切な時期に検討するようにというふうに指示をお願いいたしました。国際世論からの批判も多くございます。

 そして一方で、捜査手法が海外と異なり、手足がとても少ないんだというような捜査機関からの意見もございます。それでありましたら、制度設計を工夫してそのバランスを取るように、そういった議論をもっと国民を巻き込んですることが望ましいというふうに考えております。それを踏まえて検討をお願いしました。

 

●5月13日 法務委員会

 少年法が改正されますと、十八歳、十九歳について二十歳以上と同様の刑事手続が取られるケースが増える可能性があります。ただ、十八歳、十九歳は精神的に未熟であり、捜査はより慎重になされなければなりません。まさに、取調べに弁護人が立ち会う必要性が高い場面です。三月三十日に続き、四月八日の当委員会でも、私から取調べに係る弁護人立会いについて質問をさせていただき、上川大臣に御答弁いただきました。

 資料二を御覧ください。

資料二の議事録のマーカーのとおり、上川大臣からこのような御答弁をいただいております。「検察の在り方検討会議を受けて設置された法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会において弁護人立会いにつき議論されたものの、捜査の在り方を本質的に変質させる可能性があることを踏まえて、導入しないこととされた」と御答弁されました。法務省がそのように大臣に報告したのだと思います。しかし、本当に「導入しないこととされた」のでしょうか。

 そこで、改めて検察の在り方検討会議と特別部会での議論の経過について私の方で確認いたしました。配付しました資料三、時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想、これは法制審の特別部会の取りまとめです。その二十一ページ、資料三にございますので御覧ください。

ここには、弁護人立会いについて、「被疑者取調べの適正を確保するとともに、被疑者において供述するかどうか、あるいは供述調書に署名押印するかどうかを弁護人と相談の上で判断できるようにして、弁護人による援助を十分なものとする必要があり、また、諸外国でも被疑者取調べへの弁護人の立会い制度を導入していることが多いことから、被疑者取調べへの弁護人の立会いを認めるべきとの意見があった」と賛成意見が記載されております。それに続けて、「これに対しては、被疑者の取調べに反対意見もあり、一定の方向性を得るに至らなかった」とあります。賛成意見に続けて反対意見が記載されているわけです。

 そしてその後に、「この度、取調べの適正確保に資するものとして、被疑者取調べの録音・録画制度を導入することとしているところであるが、取調べへの弁護人の立会いについては、それ以上に取調べへの支障が大きいとして強い異論があることから、当部会において結論を得ることは困難であり、その要否及び当否も含めて別途検討されるべきである」と記載されています。

 「導入されないこととなった」などと書いていません。賛成意見と反対意見の両論があって一定の方向性を見ることができなかったことから、この部会ではそれ以上議論されず、別途検討することとなったというのが正しい経緯です。

 資料二と資料三の違いを私が法務省に指摘しましたら、法務省は過去の答弁と同じく答弁しただけですと言うのです。では、過去の答弁とは何ですか、見せてくださいと言いましたら、資料四の議事録が出てきました。資料四を御覧ください。

資料四のマーカーを引いたところが法務省の答弁で、林眞琴さんの答弁ですが、導入しないこととされたとどこに記載されているのでしょうか。書かれていません。

 法務省は一事が万事この調子で、自分たちのやりたくないことは少しずつ違うことを言って、議事録の中で既成事実をつくり上げていく。そういうやり方はやめるべきです。取調べの弁護人立会いに反対であるならば堂々と理由を述べるべきであって、少しずつやらない方向へ答弁をすり替えていくような方法を、国権の最高機関である国会の答弁という国民に対して最も誠実であるべきで、取るべきではありません。

 前回の答弁は刑事局長が決裁し、大臣に報告したのでしょうが、導入しないこととされたとの部分は法制審の議事録に書いていないので、撤回を求めました。

 法制審の議事録を見ますと、答申には取り込まれないけれども、弁護人の立会い制度について導入しないのかどうかということについては、その要否、つまり導入するかしないか、当否、妥当かどうか、要否及び当否も含めて別途検討されるべきと書いてあるんですよ。それを、前回の答弁のように導入されないこととなったというふうに述べたら、その議事録の部分だけ見たら、ああ、法制審で導入されないというふうに結論が出たんだと誰もが誤解してしまいます。

 その導入されないこととなったというのは過去にどこにも書いていません。

 また、刷新会議の中でも、全体の在り方で検討すべきということ、また八年前の法制審においては、全体の中ではなく、取調べへの弁護人の立会いという項目について、その要否及び当否も別途検討されるべきであるというふうに書いてありますので、それを踏まえて、別途検討というのはいつスタートするんでしょうか。刑訴法の三年後の見直し規定が付いております。三年後の見直し時期に向けて議論をいつスタートさせるのか質問し、別途の検討を早く始めて頂くようお願いいたしました。

 

●5月18日 法務委員会

前回指摘したとおり、四月八日の法務委員会で上川大臣が、法制審特別部会で導入しないということとされたと御答弁されましたが、それでは、過去の法務省答弁に「導入しないこととされた」と答弁したことがあるかどうかを平成二十七年当時まで遡って国会議事録を全てチェックいたしました。その結果、過去にそのような答弁はありませんでした。昨日、法務省刑事局も、「導入しないこととされた」という答弁は過去一度もしていないことを認めました。資料一を御覧ください。

在り方検討会での村木厚子さんの発言議事録です。本当に驚くべきことが書かれています。私は読んだときの衝撃を忘れません。最後の部分に私がマーカーを引いておきました。弁護人の立会いの必要性を述べています。彼女もまた法制審特別部会の委員です。法制審特別部会では果たして「導入されないこととされた」のでしょうか。その基本構想に記載してあるとおり、取調べの弁護人立会いについては賛否両論あったため「結論を得ることが困難であった」のではないですか。そのため、「その要否・当否を含めて別途検討されるべきこととされた」のですよね。このように、基本構想の議事録を引用して質問しています。もう一度言います。弁護人の取調べの立会いについては、結論を得ることが困難であったため、その要否、当否を含めて別途検討されるべきこととされたのですよね。大臣は前回、答弁が説明不足であったとおっしゃってくださいました。そうであれば、説明不足の点を補足して、再度御答弁をお願いいたしました。


〈上川陽子法務大臣のご答弁〉

 ただいま森まさこ委員御指摘のこの法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会におきましては、中間報告として、時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想が中間的な取りまとめとして出されたところでございます。ここにおきましては、被疑者の取調べへの弁護人の立ち会いにつきまして、当部会において結論を得ることは困難であり、その要否及び当否も含めて「別途検討されるべきである」と記載をされているところでございます。


〈森まさこ〉

 御答弁を大臣からいただいたとおり、法制審特別部会では、その要否、当否を含めて別途検討されるべきこととされたわけでございます。それでは、大臣、ここに書いてあります「別途検討されるべきこととされた」というところにいう別途検討、これはいつするのですか。昨年末、大臣が受け取られました刷新会議の報告書でも三年後の見直しを含め検討すると記載されていますので、大臣から検討のスケジュールをお示しくださいますようお願いいたします。

 


〈上川陽子法務大臣のご答弁〉

 法制度につきましては、社会情勢の変化等も踏まえつつ、時代に即したものとなるよう不断の検討を行っていくということが重要であると、これは基本的な認識でございます。この被疑者の取調べへの弁護人の立会いにつきましては、法務・検察行政刷新会議、これは森まさこ委員が法務大臣のときに立ち上げられた会議でございまして、報告書も出されたところでございますが、そこの中におきましては、弁護人の立会いの是非も含めた刑事司法制度全体の在り方について、社会の変化に留意しつつ、中略でありますが、幅広い観点からの検討がなされるよう適切に対応することとの御意見をいただいたところでございます。私からは、このことにつきまして様々な分野の様々な視点での幅広い御意見をいただいたところでございますので、これをどのように対応していくのかということも含めまして、いろいろ分野がございますので、その意味で適切に対応してまいりたいという、こうした物の考え方の中で、刑事局に対しまして適切に対応するよう指示をしたところでございます。法制審議会、また法務・検察行政刷新会議におきましても様々な御意見、また先ほど申し上げたような記載事項もございますので、刑事司法制度全体の中で適切に対応していくものと考えております。


〈森まさこ〉

 上川大臣、ありがとうございます。上川大臣は、私が当時立ち上げました法務省の刷新会議、この報告書を受けて、公文書の取扱いや決裁の在り方などについては法務省ガバナンス会議を立ち上げてくださいましたし、また、今ほど議題にしております弁護人の取調べへの立会いを含めた捜査全般の在り方については刑事局に指示をしてくださいました。大変有り難く思っております。ただ、その大臣の指示を踏まえて刑事局が何をしているかと申しますと、指示を踏まえた後に、私のこの委員会での質問に対して、「導入しないこととされた」という、過去一回もしていない答弁を大臣にさせるなどしておりまして、本当に大臣の指示を踏まえてこの取調べの弁護人立会いの問題について検討をしているのか、非常に疑問に思っております。そこで、大臣におかれましては、大臣が指示をした後に刑事局において具体的にどのような作業をしているのか、いま一度確認をしていただきたく思います。例えば、立会いについては、立会いを求めたのに拒否されたなどの現場における個別具体例を検討することも必要であると考えられます。弁護士の皆様方からはこのような実務における具体例を私の方にいろいろと聞いておりますので、こういったことを実務者レベルで日弁連などの弁護士の皆さんと法務当局との協議の場を設けてはいかがでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。


〈上川陽子法務大臣〉

 これは刑事局の方に指示をしたところでございまして、刑事司法制度全般のこの手続に係る大変重要な項目の一つであると認識をしております。当初、私は今冒頭の答弁で申し上げたとおり、刑事訴訟法、また刑事のこの手続に関しましては絶えず見直しをしていくべき事柄であるということで、検察行政刷新会議の中での御提言もそのような趣旨でしっかりと位置付け、そして認識をした上で指示をしたところでございます。どのようなやり方で対応していくのか、改めて刑事局の方に、少し私の方からその内容につきましての動きについてはフォローさせていただきまして、またそのような方向性につきましてどう考えているのかということも併せて考えてみたいというふうに思っております。

 


〈森まさこ〉

 ありがとうございます。大臣の方で指示の後、刑事局で何をされているか御確認いただくということでございました。今ほど私の方で提案をいたしました、実務者レベルでの弁護士と法務当局との協議の場を設置することについても検討をお願いしたいと思います。

 


以上が概要でございます。

今後も国民のため、より良い日本の未来のため、全力で職務を全うしてまいります!