皆さんこんにちは、参議院議員の森まさこです。

本日は4月20日の法務委員会にて可決された所有権不明土地に関する民法改正の概要を報告いたします。私が法務大臣時代から取り組んできた政策でもあります。

 

所有者不明土地とは不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず又は判明しても連絡がつかない土地のことを言い、所有者不明土地の割合は約22%にのぼります。(H29年度 国土交通省調査)所有者不明土地は全国に多数存在し、公共事業の実施や民間取引を妨げるなど、多くの問題を引き起こしています。法務省では高齢化社会の進展等で今後も所有者不明土地が増加するおそれがある状況に鑑み、⑴所有者不明土地の発生予防と、⑵既に発生している所有者不明土地の利用の円滑化の両面から総合的に民事基本法制の見直しを行いました。

 

⑴     所有者不明土地の発生を予防する方策(こちらは以下の要旨の三に該当します)

「民法等の一部を改正する法律案」(不動産登記法の一部改正)

所有者不明土地の主な発生原因は、相続登記や住所変更登記の申請が義務ではないことにあります。そこで、不動産について相続登記や住所変更登記の申請を法律上義務付けるとともに、登記手続の簡素化や登記官による職権的な住所情報等の更新など国民の負担軽減策をパッケージで導入しました。

 

○相続に関する不動産登記情報の更新を図る方策(画像1枚目)

背景:登記名義人と実際の所有者とが異なることがあるが、そうすると

①     登記名義人の相続人が分からないため、所有者の捜索に時間と費用がかかり用地買収等が妨げられる。

⇒・不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける

 ・相続登記の申請義務の実効性を確保するよう、環境整備策をパッケージで導入する

②     登記名義人が死亡しているかどうかだけでも分かれば、事業要地を円滑に選定することができるとの指摘がある。

⇒・登記官が他の公的機関から死亡等の情報を取得し、職権でその旨を登記に表示する

○住所変更未登記への対応(画像2枚目)

現状:住所変更登記は義務ではなく、自然人・法人問わず転居・本店移転の度に登記をするのには負担を感じ、放置されがちである。

⇒・住所等の変更登記の申請を義務付ける

・他の公的機関から取得した情報に基づき、登記官が職権的に変更登記をする新たな方策も導入する

 

⑵     所有者不明土地の利用の円滑化を図る方策(こちらは以下の要旨の一に該当します)

「民法等の一部を改正する法律案」(民法の一部改正)

現行の不在者財産管理制度等は、人単位で財産全般を管理する必要があるため、所有者不明土地の管理の観点からは非効率になりがちです。また、土地の共有者の一部が不明であるケースでは意思決定ができず、土地の造成や売却・賃貸が困難になるなどの問題が発生します。そこで、個々の土地・建物の管理に特化した所有者不明土地・建物管理制度や、共有者の一部が不明である場合でも土地の利用・処分を可能とする制度等を創設しました。

 

○財産管理制度の見直し(要旨一の3)

裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任するなど個々の土地・建物に特化した新たな財産管理制度を創設することで、所有者不明土地・建物の管理を効率化・合理化する。

○共有制度の見直し(要旨一の2)

裁判所の関与の下で、不明共有者等に対して告示等をした上で、残りの共有者の同意で共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設するなどにより、不明共有者がいても共有物の利用・処分を円滑に進めることが可能になる。

 

 

以下の要旨は法務委員会が開催されるにあたって提出された法律案になります。

 

「民法等の一部を改正する法律案(閣法第55号)要旨」

本法律案は、所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の発生を防止するとともに、土地の適正な利用及び相続による権利の承継の一層の円滑化を図るため、相隣関係並びに共有物の利用及び管理に関する規定の整備、所有者不明土地管理命令等の制度の創設並びに具体的相続分による遺産分割を求めることができる期間の制限等に関する規定の整備を行うとともに、相続等による所有権の移転の登記の申請を相続人に義務付ける規定の創設等を行おうとするものであり、その主な内容は次のとおりである。

 

一、民法の一部改正

1 境界線の調査のための隣地使用権に関する規定等を整備するとともに、電気等の継続的給付を受けるための設備設置権に関する規定等を創設する。

2 所在等が不明な共有者がいる場合の共有物の変更又は管理に関する決定方法の特則、共有物の管理者に関する規定及び所在等が不明な共有者の不動産の共有持分の他の共有者による取得に関する特則等を創設する。

3 所在者の所在等を知ることができない土地若しくは建物又はその共有持分及び所有者による管理が不適当である土地又は建物について裁判所が管理人による管理を命ずる規定等を創設する。

4 相続財産の保存のための統一的な相続財産管理制度を創設するとともに、具体的相続分による遺産分割を求めることができる期間の制限の規定等を整備する。

二、非訴訟事件手続法及び家事事件手続法の一部改正

一の改正により創設された制度の裁判手続きを創設する等の整備を行う。

三、不動産登記法の一部改正

相続等による所有権の移転の登記等の申請を相続人に義務付ける規定を創設するとともに、不動産登記に係る手続きにおける申請人の負担の軽減を図るための規定(相続人申告登記制度及び所有不動産記録証明制度の創設、登記の抹消手続の簡略化等)を創設する。

四、この法律は、原則として、公布の日から帰参して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

資料出典:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001391011.pdf

 

来週のブログでは法務委員会における私の質問について報告を行う予定です。

主な質問内容は

・少年法改正案について

・取調べの弁護人立ち会いについて

・被害者支援弁護士について

になります。