みなさんこんにちは。参議院議員の森まさこです。

先日3月3日(水)に行われた参議院予算委員会で質問に立ちました。
本日は、新しい時代の危機管理体制の提案について総理に質問した内容をご紹介いたします。

二 新しい時代の危機管理体制の提案
 
〈提案内容〉
1 現在の内閣官房事態室をバージョンアップしオールハザード対応危機管理室へ。
2 オールハザード対応訓練のシナリオライティング基地を福島県に置く。
ロボットテストフィールドを、エミッツバーグ訓練基地を超える世界屈指のエマージェンシー訓練基地へと目指す
 
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 参議院自民党の武見敬三副会長からの代表質問に対して菅総理が、感染症が安全保障上の危機であると初めて認めました。わが国において画期的な答弁であったと思います。
 
 今や、感染症だけでなく、国家の存立に関わるあらゆる危機について一元的に捉え対処していくのが国家のリスクマネジメントとして世界の趨勢であります。


 国際団体であるIAEM世界危機管理協会においては、あらゆる危機を想定するオールハザードアプローチをとっています。約150の国から約一万人の資格者(エマージェンシーマネージャー 国際危機管理士)が登録しています。日本人がいなかったのですが、私が4年前に日本人で初めてのエマージェンシーマネージャーPDTの資格を取得し、世界大会にも参加し世界屈指の防災訓練基地であるエミッツバーグ訓練施設へも行きました。
 私がこの資格を取ったのは、東日本大震災のとき官邸の対応が遅かったことを批判するだけではなく、どうすればもっと多くの人を助けられたのか、自分自身が複合災害対策のプロの知識を身につけて、国の制度をよくしなければならないと考えたからです。
 また、特定秘密保護法担当をさせていただいた後は、自民党治安・テロ対策調査会長を四期連続させて頂き、テロ対策も学んでまいりました。その経験から私が強く提案したいことがあります。
「我が国の危機管理をオールハザードアプローチで再構築しないと、迫り来る危機には対応できないということです。」
環境変動により自然災害も激甚化の一途です。テロ、ミサイル、感染症、大規模災害、サイバー攻撃がいつ同時多発的に起きるかもしれない時代です。
 IAEMでは、複合災害における縦割りの弊害を克服するために、ICS、インシデントコマンドシステムで統一化をし、要するに危機管理に関する言語を共通化しています。どの省庁であっても、どの上下関係であっても、民間であっても、地方であっても一瞬で通じます。
 私の試験官は、FEMA 米国連邦危機管理庁の元長官グレッグ・ヒューゲ氏ですが、彼は福島県の原発事故の時、オバマ大統領のもとでFEMAの長官を務め、福島県の原発事故対応の指揮をした人物です。フロリダ州の消防士からFEMAの長官にまでなりましたが、彼が自らの経験から新しい危機管理体制の変革を提唱してきたのです。
 この話をするとすぐ日本版FEMAや新しい省庁の話をしているのかと言われてしまうのですが私は組織論を述べているのではありません。作るというよりは、今は、とにかく迅速に機能面の向上、質の向上をご提案します。
 
内閣危機管理監の下の事態室を更にバージョンアップすべきと考えますが、いかがですか?(総理へ)

 


総理の答弁
「政府においては、内閣総理大臣の指揮の下に、内閣危機管理監を始め内閣官房が中心となって省庁横断的な取り組みを行う体制を整えています。
 紹介がありましたとおり、自然災害のみならず、テロなどの重大事件や弾道ミサイルの発射、危険性の高い感染症の発生など、国民生活を脅かす様々な事態を想定した訓練を通じて、関係省庁が連携し、初動対応能力の練度の維持向上を図っているところであります。
 引き続き、縦割りを排し、省庁の壁を乗り越えて、政府の総力を挙げて対応できるよう、不断の見直しを図りつつ、危機管理に万全を期していきたいと思います。」
 
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 総理のおっしゃるとおり、現在事態室の下に初動体制について組織図はできているのですが、時々刻々と変わるタイムラインの中の防災を完全にしていくために、不断の見直し、特にプロフェッショナルチームを備え付けていくことには更なる改善の余地があると思っています。
もう一つの提案はシナリオです。今世界の趨勢はシナリオ型の訓練ではなくシナリオブラインドの訓練です。これは内閣官房で少し行われていますが、私の理想は全国でブラインド型訓練をすることです。ハードの強靭化に対して、ソフトの強靭化とでも言うべきものです。シナリオの質をどういうふうに上げていくかということです。
 防災の日に閣僚が官邸で防災訓練をしますね。私も経験がありますが、あの時にシナリオが配られてセリフが決まっていて、時間の中でそれを読んでいって終わります。それで本当に現実の災害に太刀打ちできるのでしょうか。
複合災害、同時多発危機への対策は、今までのようなシナリオ型訓練ではなく、シナリオブラインドの訓練が主流です。シナリオをブラインドにして、ミスしてもいい、ミスの反省をしていくことで柔軟な発想で災害に対応できると思います。
これでは現実の災害に太刀打ちできません。
 シナリオをどうやって作っていくかということを、これは諸外国ではプロが作る、危機管理のプロが作る事。
 そして、その素材は大災害の記憶です。福島県の県民全員が3.11の辛い記憶を持っています。例えば、津波に流された我が子を探しに行こうと思っても、原発事故が起きて立ち入り禁止で行けなかった方がいます。又は、放射能汚染の恐れで政府の支援隊がずっと来なくて、1人で我が子を探し続けた方もいます。彼らはその苦しみを二度と他の誰かに味わって欲しくないと言っています。この魂の叫びこそ、次世代の命を助けるための災害訓練のシナリオにしっかりと生かしていくべきではないでしょうか。
 まとめますと、
「福島の複合災害の記憶、アジア型災害対策のシナリオを福島県から発信すること、南相馬ロボットテストフィールドのAIやICT、ロボット技術を駆使した防災テックと組み合わせて、エミッツバーグ訓練基地を超える世界屈指のエマージェンシー訓練基地を目指すべきと考えますが、いかがでしょうか。」

総理の答弁
「福島ロボットテストフィールドは、無人航空機、インフラ点検、災害ロボット、水中探査ロボットなどの一大開発実証拠点として、東日本大震災の経験も踏まえ、実際のインフラや災害現場などを再現し、ロボットの操縦訓練や防災訓練などにも活用しております。
 ご指摘のとおり、複合災害対応の経験をしっかりと生かしてまいりたいと思います。
 具体的には、福島県消防本部による災害シナリオを模擬した消防訓練、災害時の指揮命令系統のつくり方などの各種の防災研修、こうしたものを実施されております。さらに、ご指摘のAIやITの活用を含め、福島ロボットテストフィールドの更なる利用促進等に向けて政府として前向きに検討してまいりたいと思います。」

 総理の答弁を踏まえて最後に以下のようにお伝えいたしました。
 語り部政策をなさっていただいておりますが、そういった語り部の皆さんの知見をシナリオに生かしていく、そういうことで南相馬のロボットテストフィールド、ナショナルセンターへの位置付けをしていただいておりますが、ナショナルエマージェンシーセンターにして頂ければ、全国各地の自治体の皆様が訓練に来たりアジアの皆様が訓練に来たりして、インバウンドにもつながると思います。

 

(次回に続く)