昨年10月31日に法務大臣を拝命してから約10か月間の任期を終えました。
保釈中の被告人の海外逃亡事件及びその後の日本の刑事司法制度の国際発信、新型コロナウイルス感染症の水際対策及び国内での感染拡大防止対策、法務・検察行政の刷新など、多くの重要な課題に取り組みました。
さらに、法務大臣就任前から関心を持ち取り組んでいた養育費の支払い確保や性犯罪対策などについても検討会やタスクフォースを設置するなど、政策を前に進めることができたのではないかと思います。
法務大臣としての取組みを振り返りたいと思います。
法務大臣就任
官邸での任命
就任会見
県内の被災地をまわり、その状況をSNSで発信
台風19号による災害発生を受け、10月13日以降福島県内の被害を受けた市町村を一つ一つまわりました。東京に帰ってきては関係省庁や自民党の非常災害対策本部に、現地の深刻な状況を訴えてまいりました。
そして10月31日に、安倍総理より法務大臣の任命を受け、皇居にて天皇陛下より認証式をしていただきました。2012年に自民党が政権を奪還し第二次安倍内閣が発足した際に内閣府特命担当大臣を務めましたので、今回は2度目の入閣となりました。
臨時国会が開会中であり、連日法務委員会にて答弁を行いました。昼食を食べる間もないほどの過密スケジュールだったのですが、地元福島県の皆様が国会にお見えになり、根本匠先生もお越しになって、昼食をご一緒させていただきました。地元の皆様には、本当に助けられております。
京都出張
第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)公開シンポジウム開会あいさつ
会場視察
六角堂・池坊会館を訪問し、京都コングレスへの生け花展示を依頼
第2回京都コングレス公開シンポジウムが、京都コングレスの会場と同じ国立京都国際会館において開催されました。今回のテーマは「再犯防止と更生支援に向けた取組の現状と今後の展望」であり、開会挨拶を致しました。また、京都刑務所・拘置所を視察しました。
タイミャンマー出張
ミャンマー連邦最高裁判所長官との会談
ミャンマー社会福祉・救済復興副大臣との会談
現地日本人弁護士との意見交換
タイ労働大臣との会談
タイ教育副大臣との会談
タイとの法務行政に関する包括的な協力覚書(MOC)の署名式
現地日本人法律弁護士との意見交換
12月10日から12月14日の間、法務大臣就任後初の海外視察としてミャンマーとタイへ行き、9名の閣僚級と会談したほか多くの方とお会いしました。
ミャンマーでは、連邦最高裁判所長官、連邦法務長官、労働・入国管理・人口大臣、社会福祉・救済復興副大臣、保健・スポーツ副大臣と会談しました。
今回「特定技能」制度の送り出しと受け入れ態勢の整備を閣僚レベルで話し合い、前向きな回答をいただけたことは大きな収穫でした。
保健・スポーツ副大臣はミャンマー唯一の女性閣僚であり、女性活躍の取り組みに関して意見交換をしました。
女性が活躍できる社会を目指す思いを確認し合い、再会を約束しました。
到着日の翌朝には、ヤンゴンの日本人墓地を訪れ献花いたしました。
戦没者慰霊碑等を日本人会の皆様が維持管理してくださっています。
先の大戦で犠牲になった多くの御霊に哀悼の誠を捧げました。
その他、JICA法整備支援プロジェクト、在ミャンマー日系法律事務所の弁護士との意見交換も実施しました。
タイでは、労働大臣、教育副大臣、内務副大臣、法務大臣と会談しました。
タイ法務大臣とは、タイとの法務行政に関する包括的な協力覚書(MOC)に署名しました。
日タイ法務省間でより緊密な連携を図ることをお約束しました。
タイの労働大臣とは、我が法務省所管の『特定技能』制度について会談しました。
二国間の特定技能制度に関する枠組みを整備し、悪質なブローカーの排除など、より安全で円滑な仕組みづくりを進めていきたいとお伝えしました。
労働大臣からも、二国間の枠組み(MOC)を早急に進めたいとのお答え頂きました。
タイにおいても、現地日本人法律弁護士の方と意見交換を実施しました。
カルロス・ゴーン被告人の海外逃亡
臨時記者会見
羽田空港視察
関西空港視察
参議院予算委員会にて法務省の対応を説明
保釈の在り方について法制審議会に諮問
ゴーン被告人の逃亡以降、お正月も法務省で事実確認と、再発防止策を講じるよう指示を出し、その後、ゴーン被告人の記者会見の直後にも法務省にて記者会見を行いました。
1月2日には国際刑事警察機構(ICPO)へ赤手配で要請、4日(日本時間)に発行を確認し、その後5日には法務大臣としてコメントを発出しました。
6日には臨時記者会見を実施し、出入国在留管理庁の協力要請を受けた国土交通省がビジネスジェット専用施設等における大型荷物の保安検査を義務化しました。
これ以降もプロジェクトチームの設置や、臨時会見の実施、国内外のメディアへの発信など、連日対応しました。
9日の午前0時半から、ゴーンの会見を受けて臨時記者会見を実施し、外国プレスが大勢集まりました。発言内容は以下のとおりです。
・ 保釈条件に違反して国外に逃亡した行為は、許されざる行為であり、それを正当化するために、我が国の法制度等について誤った事実を殊更に喧伝するものであり到底看過できない。
・ 我が国の刑事司法制度は、個人の基本的人権を保障しつつ、事案の真相を明らかにするために、適正な手続を定めて適正に運用。
・ 刑事司法制度には様々な違いがある。その是非は制度全体を見て評価すべきであり、一部のみを切り取った批判は適切ではない。
・ 我が国の刑事司法制度に対する批判への反論
具体的な論点については法務省HPにフランス語、英語でも記載しました。
また、ウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズ等の海外メディアにも出稿し、日本の刑事司法制度の正しい理解のために世界に向けて発信を行いました。
羽田空港、関西空港も実際に視察し、再発防止をさらに確実なものとしました。
更に、法務大臣GPS勉強会を立ち上げ、保釈中の被告人へのGPS装着について諸外国の導入状況などを考慮しつつ検討を行い、法制審議会に諮問を行いました。
2020年2月には義家法務副大臣をレバノンに派遣し、司法大臣、大統領、外務・移民大臣等と会談を行いました。
カルロス・ゴーン被告人がレバノンに逃亡していることに関し、日本政府の立場を伝達し、レバノン政府の理解を得ることができました。
そして、本件の解決が日本・レバノン両国にとって極めて重要な課題であることについて、両国の認識が一致しました。
また、我が国の刑事司法制度について、正しい理解が得られるよう働き掛けを行いました。
日本の刑事司法制度は、適切に設計され、適切に運用されていること、改善すべきことは謙虚に改善し続つづけると繰り返し国際社会に向けて発信しました。
ゴーン被告人においては、主張すべきことがあるのであれば、我が国の公正な刑事司法手続の中で主張を尽くし、,公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望みます。
民事裁判のIT化諮問
2月の法制審議会では、保釈の在り方についての諮問に加え、民事訴訟について手続きのオンライン化と訴訟記録の電子化を実現するため、民事裁判のIT化についても諮問を行いました。
我が国における民事裁判手続では、未だオンラインでの訴え提起や関係者の出頭を要しないウェブ会議による手続などが認められていないなど、必ずしもIT化が進んでいない現状にあります。
私も同期の弁護士などから、これを早く解決してほしいと言われています。
外国ではIT化、AI化まで進んでおりますので、そういったところまで目標に置いて、近年の情報通信技術の飛躍的な進展や諸外国における裁判のIT化の普及状況などを踏まえて、我が国の民事裁判手続をしっかりと国際レベルまでもっていってほしいと思います。