みなさまこんにちは。参議院議員の森まさこです。
6月5日に改正自動車運転死傷処罰法が、3日前の6月2日には改正道路交通法が成立しました。今回は、これらの法改正により何が変わったのかご説明します。
①道路交通法
円滑な道路交通を確保する観点から設けるもので、警察庁が所管しています。今回の法改正により、運転妨害罪が新設されました。あおり運転行為を抑止することが期待されています。
②自動車運転死傷処罰法
人の生命、身体の安全を守るための法律であり、故意に危険な運転を行い、人を死傷させた場合に懲役刑で重く処罰する法律です。法務省が所管しています。いわゆるあおり運転に関して、危険運転の規定に2つの類型が追加されました。
①改正自動車運転死傷処罰法
~危険運転致死傷罪の類型にスピードが出ていない状態、前方に回り込んで停止するようなあおり運転行為も~
危険運転致死傷罪の法定刑
悪質で危険な運転行為により自動車を走行させ人を負傷又は死傷させた場合に適用される罪です。飲酒運転や薬物を使用した状態での運転など。人を負傷させた者は十五年以下の懲役、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役となります。(注1)
法改正で何が変わったのか
危険運転致死傷罪の対象となる行為に2つ追加されました。(原文カッコ内省略)
一、車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
二、高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為
なぜ法改正をする必要があったのか
これまで危険運転致死傷罪の適用は、加害者が危険スピードで運転している場合などに限られており、適用範囲が限定的とされていました。しかし、被害者車両を停車させ、後続車両が追突するなどの事故が発生したことも踏まえ、速度要件のない類型が追加されました。
(改正前の自動車運転死傷処罰法では、危険運転致死傷罪について)加害者車両が「重大な交通の危険を生じさせる速度」で走行して「著しく接近」することが要件とされているため、例えば、通行妨害目的で、走行中の被害者車両の前方に進入して自車を停止し、被害者車両が追突するなどして人が死傷したとしても、「著しく接近」したときの自車の速度が「重大な交通の危険を生じさせる速度」との要件を満たすことがなければ、同号に掲げる行為には該当しないこととなります。しかしながら、こうした行為は、被害者車両の走行速度や周囲の交通状況等によっては、重大な死傷事故につながる危険性が類型的に高く、現行の危険運転致死傷罪に規定されている行為と同等の当罰性を有するものと考えられます
(法制審議会議事録より)
まとめ
よって、車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止する行為や、高速道路で走行中の自動車の前方で停止し走行中の自動車を停止させる行為で人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪(懲役刑)に問われることになります。
②改正道路交通法
~新たに運転妨害罪が追加されました~
運転妨害罪の法定刑
①他の車両等の通行を妨害する目的で、道路交通の危険を生じさせる次に掲げる行為を行った場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
・急ブレーキ
・急な進路変更
・左車線からの追い越し
・不要なクラクション
・高速道路での最低速度違反
など
②その中でも、高速道路等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
行政処分
①の場合
違反点数 25点
免許取り消し処分となり、2年間免許が取得できなくなります(欠格期間2年)
②の場合
違反点数 35点
免許取り消し処分となり、3年間免許が取得できなくなります(欠格期間3年)
まとめ
あおり運転行為自体に対し重い罰則が科されることとなりました。あおり運転行為が運転妨害罪にあたるとされた場合は、免許を取り消しとなります。
「あおり運転」は,悪質・危険な運転行為であり、厳正な対処を求める国民の皆様の声も高まっていました。法務省所管の自動車運転死傷処罰法については、私が今年一月に臨時の法制審議会に諮問を行い、今国会で成立させることができました。
臨時の法制審議会で諮問
(注1)
危険運転致死傷罪
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
1枚目法務省
2・3枚目警察庁より