一日の決算は一日にやる

吉良節子(土光敏夫元秘書)

 

土光さんは、「個人は質素に、国はゆたかに」と地味で質素な生活を貫きました。自宅は古く軋む廊下も修繕することなく、エアコンもつけない。ボールペンも書けなくなるまで使いました。

土光さんが色紙に書く中国の古典にある言葉。「日新、日日新」は、今日という日は1度しかなく、それは貧乏人にも王様にも平等に訪れる。今日を有意義に生きることで、昨日より、明日が新しくなるべきだという意味があります。

土光さんは、一日の決算は一日にやるといい、失敗もあるだろうが、昨日を悔やむこともなく、明日を思い煩うこともない。今日を精一杯生きることであり、全力を傾けて生きることだと述べています。土光さんの人生が詰まった言葉です。

 

とかく長い期間で物事を考えてしまう中で、一日一日をきちんと積み重ねることの大切さを感じました。僕は明日があるという言葉にあまり前向きな気持ちをもつことができませんでした。それは明日があるから生きなくてはならず、明日がなければ、今日で終わるというネガティブな想いを持っていたからです。明日を言い訳にして励ましていたのでしょう。そういう慰めが嫌でした。しかし、土光さんの今日を全力で生きるという考えは、明日があると慰めるのではなく、明日を生きるためにも今日を全力で取り組む、明日はまた「新しい今日」であり、その繰り返しが新しくなるから楽しめるのだと感じました。