「足りないものはなんですか」
僕は問うた。
「お金」
貴女は俯いて答えた。どこか泣きそうだった。
「足りないものはなんですか」
今度は何も答えずに貴女は崩れ落ちた。
床に黒いシミが出来た。ひとつ、ふたつ
「お金なんか欲しいんじゃない」
「ほんとうはもっと欲しいものがある」
「でも、それは」
「足りないものは、なんですか」
「愛は、お金があれば買えるから」
それならば
それならば貴女にお金をあげましょう。
貴女に何百万円も、何千万円も
汚い紙切れをあげましょう。
「足りないものはなんですか」
貴女はまた、黒ジミを造る。
「お金」
そして僕は、消えましょう。