『さくらの木』 詩 金子みすゞ『さくらの木』 詩 金子みすゞ もしも、母さんが叱らなきゃ、 咲いたさくらのあの枝へ、 ちょいとのぼってみたいのよ。 一番目の枝までのぼったら、 町がかすみのなかにみえ、 お伽のくにのようでしょう。 三番目の枝に腰かけて、 お花のなかにつつまれりゃ、 私がお花の姫さまで、 ふしぎな灰でもふりまいて、 咲かせたような、気がしましょう。 もしも誰かがみつけなきゃ、 ちょいとのぼってみたいのよ。