『林檎畑』 詩 金子みすゞ『林檎畑』 詩 金子みすゞ 七つの星のその下の、 誰も知らない雪國に、 林檎ばたけがありました。 垣もむすばず、人もいず、 なかの古樹の大枝に、 鐘がかかっているばかり。... ひとつ林檎をもいだ子は、 ひとつお鐘をならします。 ひとつお鐘がひびくとき、 ひとつお花がひらきます。 七つの星のしたを行く、 馬橇の上の旅びとは、 とおいお鐘をききました。 とおいその音をきくときに、 凍ったこころはとけました、 みんな泪になりました。