『さざえのお家』 詩 金子みすゞ
海の夜明だ、砂のみち、
トントン、「ちちやでございます、
海豚のお乳をおきましよか。」
海のまひるだ、海松並木、
「号外、号外」チリチリチン、
「鯨が鰤網にかかけられた。」...
海の夜ふけだ、岩のかげ、
トントン、「急ぎじゃ、はよ開けた、
電報、電報、」ひっそりこ。
お風邪か、お留守か、お寝坊か、
さざえのお家は戸があかぬ。
明けても、暮れても、ひっそりこ。
海の夜明だ、砂のみち、
トントン、「ちちやでございます、
海豚のお乳をおきましよか。」
海のまひるだ、海松並木、
「号外、号外」チリチリチン、
「鯨が鰤網にかかけられた。」...
海の夜ふけだ、岩のかげ、
トントン、「急ぎじゃ、はよ開けた、
電報、電報、」ひっそりこ。
お風邪か、お留守か、お寝坊か、
さざえのお家は戸があかぬ。
明けても、暮れても、ひっそりこ。