『芝草』 詩 金子みすゞ
名は芝草というけれど、
その名をよんどことはない。
それはほんとにつまらない、
みじかいくせに、そこら中、
みちの上まではみ出して、
力いっぱいりきんでも、...
とても抜けない、つよい草。
れんげは紅い花が咲く、
すみれは葉までやさしいよ。
かんざし草はかんざしに、
京びななんかは笛になる。
けれどももしか原っぱが、
そんな草たちばかしなら、
あそびつかれたわたしら等は、
どこへ腰かけ、どこへ寝よう。
青い、丈夫な、やわらかな、
たのしいねどこよ、芝草よ。
名は芝草というけれど、

その名をよんどことはない。
それはほんとにつまらない、
みじかいくせに、そこら中、
みちの上まではみ出して、
力いっぱいりきんでも、...
とても抜けない、つよい草。
れんげは紅い花が咲く、
すみれは葉までやさしいよ。
かんざし草はかんざしに、
京びななんかは笛になる。
けれどももしか原っぱが、
そんな草たちばかしなら、
あそびつかれたわたしら等は、
どこへ腰かけ、どこへ寝よう。
青い、丈夫な、やわらかな、
たのしいねどこよ、芝草よ。