『海の花園』 詩 金子みすゞ
~澤江の海にて~
入江の底の花園は、
舟のうえから見られます。
とぶ光は白い蝶、
ゆれるみどりはちけい草。
...
ぼたんに似てる、むらさきの、
くらげの花はかず知れず、
こんなきれいな花ぞのは、
陸のうえにはありません。
だけどもそれは、つまらない、
濱の濱茶の花なのよ。
はるかの沖のその底の、
丘や、谷間や、川べりや、
それから、海の王さまの、
御城の庭に咲く花は、
陸の花しきゃ知らぬ子にゃ、
おもうことさえできません。
~澤江の海にて~
入江の底の花園は、
舟のうえから見られます。
とぶ光は白い蝶、
ゆれるみどりはちけい草。
...
ぼたんに似てる、むらさきの、
くらげの花はかず知れず、

こんなきれいな花ぞのは、
陸のうえにはありません。
だけどもそれは、つまらない、
濱の濱茶の花なのよ。
はるかの沖のその底の、
丘や、谷間や、川べりや、
それから、海の王さまの、
御城の庭に咲く花は、
陸の花しきゃ知らぬ子にゃ、
おもうことさえできません。