『ばあやのお話』 詩 金子みすゞ
ばあやはあれきり話さない、
あのおはなしは、好きだのに。
「もうきいたよ」といったとき、
ずいぶんさびしい顔してた。
ばあやの眼には、草山の、
... 野茨のはなが映ってた。
あのおはなしがなつかしい、
もしも話してくれるなら、
五度も、十度も、おとなしく、
だまって聞いていようもの。
ばあやはあれきり話さない、

あのおはなしは、好きだのに。
「もうきいたよ」といったとき、
ずいぶんさびしい顔してた。
ばあやの眼には、草山の、
... 野茨のはなが映ってた。
あのおはなしがなつかしい、
もしも話してくれるなら、
五度も、十度も、おとなしく、
だまって聞いていようもの。