『舟乗と星』 詩 金子みすゞ
船乗は星をみた、
星はいってた、
「おいで、おいで。」
... 波はずいぶん高かった。
船乗の眼はかがやいた。
風もおそれず、波もみず、
星へへさきを向けていた。
船乗は岸へついてた、
知らぬまに。
「星か、星か、」とおもってた。
星はやっぱり遠かった。
船乗をにがしたと、
波はなおさら怒ってた。
船乗は星をみた、
星はいってた、
「おいで、おいで。」
... 波はずいぶん高かった。
船乗の眼はかがやいた。
風もおそれず、波もみず、
星へへさきを向けていた。
船乗は岸へついてた、
知らぬまに。
「星か、星か、」とおもってた。
星はやっぱり遠かった。
船乗をにがしたと、
波はなおさら怒ってた。