『柘榴の葉と蟻』 詩 金子みすゞ 『柘榴の葉と蟻』 詩 金子みすゞ 柘榴の葉っぱに蟻がいた。 柘榴の葉っぱは廣かった、 青くて、日陰で、その上に、 葉っぱは静かにしてやった。 けれども蟻は、うつくしい、 花をしとうて旅に出た。 ... 花までゆくみち遠かった、 葉っぱはだまってそれ見てた。 花のふちまで来たときに、 柘榴の花は散っちゃった、 しめった黒い庭土に。 葉っぱだまってそれ見てた。 子供がその花ひィろって、 蟻のいるのもしらないで、 握って駈けて行っちゃった。 葉っぱはだまってそれ見てた。