『さようなら』 詩 金子みすゞ
母さま、母さま、まっててね、
とても私はいそがしい。
うまやの馬に、鶏小屋の、
鶏と小ちゃなひよっこに、
みんなさよならしてくるの。
... きのうの木樵に逢えるなら、
ちょいと山へもゆきたいな。
母さま、母さま、待ててね、
まだ忘れてたことがある。
町へかえればみられない、
みちのつゆくさ、蓼のはな、
あの花、この花、顔をみて、
ようくおぼえておきましょう。
母さま、母さま、待っててね。
母さま、母さま、まっててね、
とても私はいそがしい。
うまやの馬に、鶏小屋の、
鶏と小ちゃなひよっこに、
みんなさよならしてくるの。

... きのうの木樵に逢えるなら、
ちょいと山へもゆきたいな。
母さま、母さま、待ててね、
まだ忘れてたことがある。
町へかえればみられない、
みちのつゆくさ、蓼のはな、
あの花、この花、顔をみて、
ようくおぼえておきましょう。
母さま、母さま、待っててね。