『ちいさなお里』 詩 金子みすゞ
芥子人形、
芥子人形。
おまえのお里へ行きたいな。
おまえのお里の藁屋根は、
わたしの手にでものるのだろ。
... それでもれんげもさくのだろ、
おまえも摘んでいたのだろ。
れんげつみつみ日が暮れりゃ、
ちいさな月も出るのだろ。
芥子人形、芥子人形。
おまえの里の春の日は、
わたしでさえも、なつかしい。
巨きな部屋がさむいとき、
巨きな猫がこわいとき、
どんなにおまえにゃ戀しかろ。
芥子人形、
芥子人形。
おまえのお里へ行きたいな。
おまえのお里の藁屋根は、
わたしの手にでものるのだろ。
... それでもれんげもさくのだろ、

おまえも摘んでいたのだろ。
れんげつみつみ日が暮れりゃ、
ちいさな月も出るのだろ。
芥子人形、芥子人形。
おまえの里の春の日は、
わたしでさえも、なつかしい。
巨きな部屋がさむいとき、
巨きな猫がこわいとき、
どんなにおまえにゃ戀しかろ。