『白百合島』詩 金子みすゞ
私ひとりが知っている、
遠くの遠くのはなれ島。
いつも私は学校の
ポプラのかげで地図を描く。
掃かれりゃ消える島だけど、
描くたびかわる地図だけど、
... いつも湖水がまんなかに、
いつも御殿がその岸に。
雪より白い、かぐわしい、
御殿のなかにすむひとは、
うすいみどりの裾ながく、
金のかむりのおひめさま。
島は白百合、花ざかり、
空まで白い百合の香に、
船は寄っても断岸の
手にも取られぬ花ばかり。
青いポプラの葉のかげで、
いつも私は地図を描く。
飽かずに、飽かずに、いくたびも、
「しらゆり島」の地図をかく。
私ひとりが知っている、
遠くの遠くのはなれ島。
いつも私は学校の
ポプラのかげで地図を描く。
掃かれりゃ消える島だけど、
描くたびかわる地図だけど、
... いつも湖水がまんなかに、
いつも御殿がその岸に。

雪より白い、かぐわしい、
御殿のなかにすむひとは、
うすいみどりの裾ながく、
金のかむりのおひめさま。
島は白百合、花ざかり、
空まで白い百合の香に、
船は寄っても断岸の
手にも取られぬ花ばかり。
青いポプラの葉のかげで、
いつも私は地図を描く。
飽かずに、飽かずに、いくたびも、
「しらゆり島」の地図をかく。