『海の人魚』 詩 金子みすゞ
大きな真珠のお手まりや、
貝のかずかず、枝珊瑚、
人魚のむすめは飽きました。
陸の子供のもつという、
黒いおめめの人形が、
ほしい、ほしいと泣きました。
... 母さん人魚のいとしさに、
人魚抱いた兒の船を、
沈めてそれを奪りました。
むすめは人魚みるたびに、
とおいお國がこいしくて、
とうとう海を捨てました。
海の人魚はやわらかな、
藻のゆりかごで、すやすやと、
いまも、お夢をみています。
陸の人魚は、ふるさとを、
こいし、こいしと磯でなく、
磯のちどりになりました。
大きな真珠のお手まりや、
貝のかずかず、枝珊瑚、
人魚のむすめは飽きました。
陸の子供のもつという、
黒いおめめの人形が、
ほしい、ほしいと泣きました。

... 母さん人魚のいとしさに、
人魚抱いた兒の船を、
沈めてそれを奪りました。
むすめは人魚みるたびに、
とおいお國がこいしくて、
とうとう海を捨てました。
海の人魚はやわらかな、
藻のゆりかごで、すやすやと、
いまも、お夢をみています。
陸の人魚は、ふるさとを、
こいし、こいしと磯でなく、
磯のちどりになりました。