『お家のないお魚』 詩金子みすゞ『お家のないお魚』 詩金子みすゞ 小鳥は枝に巣をかける、 兎は山の穴に棲む。 牛は牛小舎、藁の床、 ... 蝸虫やいつでも背負っている。 みんなお家をもつものよ、 夜はお家でねるものよ。 けれど、魚はなにがある、 穴をほる手も持たないし、 丈夫な殻も持たないし、 人も小舎をたてもせぬ。 お家をもたぬお魚は、 潮の鳴る夜も、凍る夜も、 夜っぴて泳いでいるのだろ。