『お坊さま』 詩 金子みすゞ『お坊さま』 詩 金子みすゞ 小さい波が来てかえる、 入江の岸のみちでした。 私のお手々ひいてたは、 ... 知らない旅のお坊さま。 なぜか、このごろおもうこと、 「お父さまではないか知ら。」 けれども遠いむかしです、 とてもかえらぬむかしです。 ざわざわ、蟹が這っていた、 入江の岸のみちでした。 私のかおみていたは、 たんぽぽ色のお月さま。