『しあわせ』詩 金子みすゞ『しあわせ』 詩 金子みすゞ 桃色のお衣のしあわせが、 ひとりしくしく泣いていた。 夜更けて雨戸をたたいても、 ... 誰も知らない、さびしさに、 のぞけば、暗い灯のかげに、 やつれた母さん、病気の子。 かなしく次のかどに立ち、 またそのさきの戸をたたき、 町中まわってみたけれど、 誰もいれてはくれないと、 月の夜ふけの裏町で、 ひとりしくしく泣いていた。