『あけがたの花』詩 金子みすゞ『あけがたの花』 詩かねこみすゞ お宮の太鼓は鳴ったけど、 花のおめめはまだ眠い。 しらしら明けの靄のなか、 ... とおくひびいて、近く来て、 だんだん消える轍の音を、 花はうつつにきいている。 夢にまじって、その音は、 とおい、とおい、見知らぬ里へ、 花のこころをのせてゆく。 名なしの草の花たちは、 きのうの埃、今朝の露、 のせたまんまで、みちのはた、 うつらうつらと夢みてる。