昼間でも薄暗く、壁も黒ずんだボロボロ木造風呂なしのアパート。

トイレも共同トイレで廊下の一番奥にあります。

 

同じフロアに住む爽やかお兄さんが

幼稚園児の私を見つける度に声を掛けてくれ、じゃれ遊んでくれました。

私はお兄さんに会うのが楽しくなっていきます。

今思うと、トキメキに似た、胸の高鳴りめいたナニカがあったように思います。

気付けばお兄さんに出会えるのを待っていて

若干ストーカーめいた子供に寄っていた様に思います。

いつもは廊下でじゃれていましたが、なぜかある日、

私から「共同ベランダに行こうよ」と誘い、お兄さんも来てくれました。

はじめは軽めのオニゴッコ的なことをして、

疲れてきたらお兄さんが肩車をしてくれました。

この時の記憶が鮮明に残っているので、遊んでくれるお兄さんに対しての「すき」の感情が

恐らくラブ寄りの「好き」に変わった頃だったように思えます。

肩車から下ろされた私は、白いGパンを履く長く伸びたお兄さんの足にまとわりつき、

最後は太ももに抱き着きました。抱っこちゃん人形の様に。

するとお兄さんは「なにやってんだよ~」と言った記憶があります。

同時に、私になにかスイッチが入ったのも覚えています。

こっぱずかしいのですが私はどさくさに紛れ、

お兄さんのお尻や股間に顔を埋めたりしました。

お兄さんは「やめろよ~」と最初は軽めに言っていましたが

私がやめないため力づくで離そうとしてきました。

私は離されないように必死です。

そのうちお兄さんの空気が変わりました。

表情から笑顔が消え、真顔になり私を引き離そうと真剣な様子でした。

力づくで引き離された時、お兄さんが言った言葉が

今も鮮明に音として大脳に刻まれています。

 

「気持ち悪いんだよ!」

 

お兄さんはすぐに外へ出て行きました。

幼稚園児の私でしたが「気持ち悪い」と言われた意味をしっかりと受け止めてしまっていました。

高い所から突き落とされた様な心境になってたのを思い出します。

それから私はお兄さんに会うのが気まずくなり、

私はお兄さんを避ける様になります。

 

トキメキに似た楽しみを失った幼稚園児は

その歳にして失恋した人の心理を浴びることとなりました。

同時に好きだった相手から「気持ち悪いんだよ」と言われたことのショックが

私の心に突き刺さってなかなか抜けなかったあの日が痛く甦ります。