善知鳥前隧道

中編

探索日 2024.11.02

公開日 2025.12.03

所在地     青森県青森市


禍々しさを背負い・・

2024/11/02 06:03  《現在地》

 

洞内に入ると外から見ていた雰囲気よりも禍々しさが増して居づらしさを感じた。

出口が見えているので特に何も問題ないだろうと思っていたが、それ以外にも洞内には気味の悪さが漂っていた。
 

壁面は何やら黄ばんでおり、気持ち悪さを演出している。

いたるところから漏れ出る水分はこの隧道の古さと残りの寿命が短いことが分かる。

ただ元一級国道隧道らしい広い洞内といたるところに施された補修の跡がこの隧道の必要性を物語っていた。

洞内の路面は基本的に舗装されており、あれだけ水が滴っているのにも関わらず水没はおろか大きな水たまりすらも存在しなかった。

排水関係はしっかり今でも機能しているのだろう。それが功をなして今の姿があるのだろう。

ただなぜか浅虫側から見て左側だけが路面が削られて砂利道になっている。

自然に壊れたものではなさそうなので人為的なのだろうが、一体どのような理由があったのだろうか。

センターラインは残っていないがそれよりすこし左側から舗装がなくなっている。

20メートルほど進むと一部壁が崩壊している場所があった。

コンクリートの腐食によるものだろうがかなり状態は悪そうだ。

穴が開いた部分からは砂利や砂のようなものが溢れ出し地面に積もっていた。

この写真だけを見れば鉄道隧道とも言えそうな感じだな。

コンクリートの隙間からは石灰分が溶け出た跡やコンクリート鍾乳石の小さなものが生成されている。

崩れるとすればこの辺りからだろうと言えるほどこの場所の状態は悪かった。

手持ちのライトとヘッドライトの二重攻撃で照らした隧道中間地点の様子である。

左半分だけが舗装されていない異様な光景であるが、この辺りはわりかし状態が良いように感じた。

 

おんなじ場所でライトをすべて消した写真を撮ってみたが両方の坑口が開口している直線隧道でも洞内を照らせるほどの光は届かないようである。

見えるのはかまぼこ型の緑色だけであるが、このわずかな光でも洞内探索では重要な心の癒しである。

 

外に出れるという事が分かるだけでかなり楽になる。

5分の3くらい歩いたところで落ち葉だまりが現れた。

海に面した場所なので年中風が吹き付けていることから大量の落ち葉が洞内に流れ込んでくるようだ。

探索中も常に風が流れており、11月の明け方ではかなり寒かった。

そしてこの場所の上を見上げるとかなり大きな亀裂が走っていた。

一瞬経年劣化によるものかとも思ったが見わたすとこの亀裂は一直線に隧道を分断していることから昔からあった工事の跡だろうという結論に至った。

いまの隧道ではこのような隙間は許されそうにないが当時はまだ法整備も十分に整っていない時代である。

この場所で工事を区切っていたのだろう。

この後も同じような亀裂を何度か見た。

 


キケンな出口

 

2024/11/02 06:05  《現在地》

 

3分の2は歩いただろうか。

隧道の状態は相変わらずでいたるところに亀裂が入っている。

水漏れ箇所も心なしか増えているように見える。

出口のシルエットと緑が鮮明になり始めた。

最後の通行車によるタイヤの跡が鮮明に残っているがそれはここだけで洞内ではすでに消えてしまっているようだ。

いよいよ坑口が見え始め、それを囲うような鉄の塊も見え始めていた。

どうやら坑口には鉄鋼のロックシェッド(落石囲い)が設置されていたようだ。

これは現道のトンネルを抜けると見えることがある。

浅虫側には設置されていないので青森側は落石の可能性がかなり高かったのだろう。

それを物語るかのようなものが目に入った。

 

鋼鉄製のネットを完全に突き破ってしまっているのである。

これには老朽化や潮風での風化も関係しているがそれ以前にこのネット上には大量の土砂や岩が転がっており、非常に危険性が高い事が分かる。

もしロックシェッドが無ければこの坑口は埋まってしまっていたかもしれない。

そのくらいこの辺りは落石が多いようだ。

地面にはコンクリートはなく、代わりにロックシェッドをくぐり抜けてきた石や木の枝などが大量に積みあがっていた。

当たれば普通に死にそうな大きさの石も大量に転がっており、この場所に長居は御免である。

浅虫側坑口同様洞内を抜けると舗装はすぐにはがされており、土などが積もることで自然化していた。

隧道から抜けた先を見ると少し低めの樹木たちが生い茂り始め、行く手を妨害してくる。

この先は先に確認したが木に覆われた厳重なフェンスがあり、脱出も侵入も不可能であった。

フェンスへの道は舗装されており、来るまでも入る事ができるがもちろん行き止まりであり、Uターンするスペースもないのでやめた方がいい。

 

次回は青森側の坑口から再探索を行う。
 

つづく。