食の安全・安心について考える
ある洋生菓子製造販売企業の経営者の方と、食品製造の安全・安心についてお話をした。
この会社は、従業員数30名弱、年商約1億円、社長は創業家の中小企業で、商品は完成した製品を全て急速冷凍し、レストランやホテルなどの業務用として販売している。 その為、クリームなどの生ものを使用していても、解凍前であれば通常の生もの製品に比べて、はるかに日持ちは良いことになる。
また、製品のデザインも洗練されていて、味の品質においてもそれなりに評価される製品です。
しかし、製造現場を見ると、壁は全面に黒カビが発生し、床には恒常的な水溜まり、窓網の穴から飛来虫が進入し、冷蔵庫のスノコを上げてみるとドロが溜まりダンゴムシ等の害虫が発生している。更に、器具・容器の洗い物は床に直置きされて散乱している、添加物などの日付管理はいい加減という具合で、当然、従業員教育も行われてなく、とても生製品の製造をしている工場とは思えないものであった。
この話、信じられないかも知れないけれど、本当の話です。
よくぞこれで、食中毒事故が起きないものだと、呆れると共に感心したり(?)したのだが、納品された製品からは、糸屑、害虫、ビニール片といった異物混入や許容外の菌数検出が頻発していたのだから、賢明な顧客は騙せない。
顧客からは問題が発生する度に、再三の改善要求が出されていたが、その都度ワンパターンの回答提出を繰り返していました。しかし、結局は年間数千万円の取引をしていた企業との取引を一気に停止されたのである。更には、余りにも状態が悪く、改善にはコストがかかりすぎるとの理由で、工場そのものを閉鎖せざるを得なくなったのである。
実は、この問題を提起したのは私で、前述の取引停止後に依頼を受けて、半年に渡って多少とも改善を進めている段階でした。
私自身は、ISO審査員やコンサルの活動を通じて、これまでにも数十社の様々な食品工場を見て改善を行っているので、指摘に問題は無いと確信していますが、改善への施設・設備の問題を認識していても、費用面での負担を忌避されていたので、出来る事は清掃への取り組み方等、作業する人の行動パターンを変えることだけになってしまったのである。
人の意識を変え、行動を変えていく作業は、易しくはない作業です。特に、組織としての食品安全構築の仕組み作り(役割に伴う責任と権限を明確にし、管理方法のシステム化を提起した)が出来ないままで、個人の意識だけに訴える方法では自ずから限界も見えています。
だから、そうした作業の途上で出された社長決断は、私個人にとっては残念な結論であったが、もし、前述したような製造環境の中で製造を続けていたら、取引停止どころではないもっと大きな問題が、必ず起こっていたであろうと思う。
その意味から考えるならば、工場閉鎖という社長の決断は正しかったと思います。
それにしても、本件のような強烈な事例は、希な事例だと思っています。
ただ、本件の本質にある問題は、人材育成に係わる教育・訓練の不備、組織力としてのマネジメント体制の脆弱さ、社内コミュニケーションの不足、特に、現場を見ようとしないで業務を丸投げしている管理者の存在である。
結果として、トップは衛生や安全を守りきれないと判断し、工場閉鎖という危機管理上の決断をせざるを得なかったのだから・・・・・
「誰が悪い」かの評価は本文の真意ではないので控えておくが、中小の食品企業が多少とも抱えている問題が多く露呈されていると思います。
製造現場にいる当事者達が、問題を問題と気付かない、或いは気付いていても対処しない、これこそが顧客(消費者)の信頼を損ねる最大の原因だと思います。
食品企業が果たすべき使命は、あくまでも安全で、消費者に安心される製品を提供し続けることである。
私達、食品業界に関わる者達は、今こそ、その為に果たすべき使命を自覚して、消費者からの信頼性向上に向かわなければならないと考えます。
以上
この会社は、従業員数30名弱、年商約1億円、社長は創業家の中小企業で、商品は完成した製品を全て急速冷凍し、レストランやホテルなどの業務用として販売している。 その為、クリームなどの生ものを使用していても、解凍前であれば通常の生もの製品に比べて、はるかに日持ちは良いことになる。
また、製品のデザインも洗練されていて、味の品質においてもそれなりに評価される製品です。
しかし、製造現場を見ると、壁は全面に黒カビが発生し、床には恒常的な水溜まり、窓網の穴から飛来虫が進入し、冷蔵庫のスノコを上げてみるとドロが溜まりダンゴムシ等の害虫が発生している。更に、器具・容器の洗い物は床に直置きされて散乱している、添加物などの日付管理はいい加減という具合で、当然、従業員教育も行われてなく、とても生製品の製造をしている工場とは思えないものであった。
この話、信じられないかも知れないけれど、本当の話です。
よくぞこれで、食中毒事故が起きないものだと、呆れると共に感心したり(?)したのだが、納品された製品からは、糸屑、害虫、ビニール片といった異物混入や許容外の菌数検出が頻発していたのだから、賢明な顧客は騙せない。
顧客からは問題が発生する度に、再三の改善要求が出されていたが、その都度ワンパターンの回答提出を繰り返していました。しかし、結局は年間数千万円の取引をしていた企業との取引を一気に停止されたのである。更には、余りにも状態が悪く、改善にはコストがかかりすぎるとの理由で、工場そのものを閉鎖せざるを得なくなったのである。
実は、この問題を提起したのは私で、前述の取引停止後に依頼を受けて、半年に渡って多少とも改善を進めている段階でした。
私自身は、ISO審査員やコンサルの活動を通じて、これまでにも数十社の様々な食品工場を見て改善を行っているので、指摘に問題は無いと確信していますが、改善への施設・設備の問題を認識していても、費用面での負担を忌避されていたので、出来る事は清掃への取り組み方等、作業する人の行動パターンを変えることだけになってしまったのである。
人の意識を変え、行動を変えていく作業は、易しくはない作業です。特に、組織としての食品安全構築の仕組み作り(役割に伴う責任と権限を明確にし、管理方法のシステム化を提起した)が出来ないままで、個人の意識だけに訴える方法では自ずから限界も見えています。
だから、そうした作業の途上で出された社長決断は、私個人にとっては残念な結論であったが、もし、前述したような製造環境の中で製造を続けていたら、取引停止どころではないもっと大きな問題が、必ず起こっていたであろうと思う。
その意味から考えるならば、工場閉鎖という社長の決断は正しかったと思います。
それにしても、本件のような強烈な事例は、希な事例だと思っています。
ただ、本件の本質にある問題は、人材育成に係わる教育・訓練の不備、組織力としてのマネジメント体制の脆弱さ、社内コミュニケーションの不足、特に、現場を見ようとしないで業務を丸投げしている管理者の存在である。
結果として、トップは衛生や安全を守りきれないと判断し、工場閉鎖という危機管理上の決断をせざるを得なかったのだから・・・・・
「誰が悪い」かの評価は本文の真意ではないので控えておくが、中小の食品企業が多少とも抱えている問題が多く露呈されていると思います。
製造現場にいる当事者達が、問題を問題と気付かない、或いは気付いていても対処しない、これこそが顧客(消費者)の信頼を損ねる最大の原因だと思います。
食品企業が果たすべき使命は、あくまでも安全で、消費者に安心される製品を提供し続けることである。
私達、食品業界に関わる者達は、今こそ、その為に果たすべき使命を自覚して、消費者からの信頼性向上に向かわなければならないと考えます。
以上